「犬夜叉」  新感線

「新感線」の公演、と書くのにためらいを覚えるほど客演客演また客演(笑)な公演でした。正確には新感線+PARCOプロデュースなのでしょうがないのかもしれませんが。

原作は以前「花の紅天狗」で宣伝美術をやっていただいたこともある、新感線とは縁のある高橋留美子御大の漫画で、現在も連載中らしいです。願いが叶うといわれる四魂の玉を巡って、それを守る巫女・桔梗と四魂の玉を手に入れて完全な妖怪になろうとする半妖の犬夜叉の因縁を中心に、500年後の未来からタイムスリップしてきた桔梗の生まれ変わり・かごめと犬夜叉、さらには四魂の玉に因縁を持つ僧・弥勒らがからんでいくのですが、原作では砕け散った四魂の玉を探すかごめと犬夜叉の旅が現在継続中なところを、きちんとオチはつけ、ただし続きを予感させるうまいしめ方がさすがだなぁと思いました。前半アドリブで作っていると思われるシーンがあって、その辺とかちょっともたもたしていたんですけど、後半はキレイにまとまっていたんじゃないかと思います。

主役の犬夜叉は「ララバイ」以来これが2本目となる佐藤アツヒロ君で、かなりハマッていたと思います。本人もこちらの方が数段やりやすかったろうなぁ。冷静に考えれば初舞台で森山幸男をやるというのはキツイ、たしかに(笑)。口調とか台詞回しも特徴あるし言いやすかったでしょうね。それにやはり昔何万人という人間を熱狂させただけの華がありました。遠山景織子さんはわりとキャラにはまっていたこともあって安心して見てられました。目がエキセントリックで良かった。綺麗だし。馬渕さんは登場シーンのとき「おいおい大丈夫か・・」と不安になるほどもたもたしていたので一瞬いやな汗が流れたんですけど(笑)、物語を他のキャラクターが動かしてくれる後半からはまあ良かったんじゃないかと・・・思います。

その物語を動かしてくれるというのが今回京さん演じる弥勒だったんですけどもーーーう、京晋佑おいしすぎ(涙)。そんでうまい。前述したアドリブのシーンなんか、アツヒロ君と馬渕さんの微妙なボケをちゃんと拾ってツッこんであげてたし、ここは芝居の核!というとこではもう決めすぎ!っていうぐらい決めてくれていたし、もちろん自分のおいしいボケは逃がさないしで、はぁぁもう、カーテンコールの時隣のなおなおさんに辛抱たまらず「京ちゃんカッコイイよぉぉぉ!!」と叫んでしまいましたよアタシャ。最後もさぁ、おいしいんだよねーー!声も綺麗に通るし、もうさすがッス!という感じでございました。あと、奈落をやった西牟田さん!!ほんとこの人もすっかりいい役者さんになって・・・・。ものすごく迫力のある悪役をきっちり演じながら、でも笑いのツボも外さない。流石です。吉田さんはわりとユニークなキャラクターだったんだけど、全出演者中一番滑舌が良かった(笑)。どんな台詞でもきっちり聞き取れるんで、ああいうポジションの役で正解だったかもしれないです。言わずもがなですが新感線のメンバーは(少なかったけど)みなさん自分のキャラをしっかり発揮してくれてました。

全体的に非常に良くできているお芝居だなぁという感想でした。きっちり料金分は楽しませてくれるというか。ただ一点文句があるとすれば「長い。」いっぱいいっぱいに詰め込んでこうなりました!っていうならいいんですけどもうちょっと短くできたんじゃないのかなぁ〜。それでも面白いのが凄いところなんですけどね。

再演版の方がスッキリまとまっていてキャストの力も上がって、いい仕上がりになっていたとは思いますが、ジャニーズという世界から出てきて、がっつり自分の居場所を作ったアッくんのはまり役中のはまり役が生まれ育った初演にはそれはそれで思い入れがあります。良い芝居でしたね。