「フォーティンブラス」

ハムレット」を上演する舞台のいわばバックステージもの。ワンマンな主演俳優、オペラ座の怪人のごとく現れる亡き役者の亡霊、その息子、そして端役フォーティンブラス。舞台への愛と思い入れがそれぞれに語られる。横内さんの、コレを書いた当時の歯ぎしりみたいなものが非常に色濃く残っていて、個人的にはその若さみたいなものが眩しかったりしましたが。しかしところどころに「これ・・・「つか」・・・?」と思うようなコテコテなセリフや展開があったのは横内さんが若かったからか今回の演出によるものなのかいまいち謎(笑)

疑問符はあるが、役者個人の力量と熱意でそれをカバーしている、とみるか、役者が熱演しているのに、勿体ない、とみるか・・・微妙な所ではあるかも。群像劇なので、見方によっては岸川親子の物語にも読めるし、黒沢の再生の物語にも読めるし、演出の焦点の持っていきかたも難しいよなあとは思うんですが。個人的にはオフィーリアとフォーティンブラスの告白シーンは好きですけどね。それから、岡村さん演出で毎回思うんですが、あの半アドリブのようなお遊びシーンは絶対無いといけないんでしょうか?要らんやろうアレ・・・。無駄に笑いを取りに行くシーンが多かったのは個人的に×。特に後半はもっとぎりぎり役者のテンションで魅せて欲しかったような。みんなそれだけの力のある役者さんだし。内輪ネタは確実に笑いが取れるしそれは別に構わないけど、濫用が目立ったよな、という気はしました。

そういう「勿体ない」点はあったにしろ、役者陣はかなり好演だった気はします。私の観た回はこれもうとにかく円城寺さんが凄かったのよ。亡霊との二人のシーン、まさに圧巻。それまでかなりだらけた感じだった舞台の空気を一瞬にして最高潮に持っていくあの膂力!!セリフの波に聞き惚れるなんてなんだか久しぶりの体験でした。あのシーンだけでももういっぺん観たい。かなりおいしい役だと思われる村上くんはやや一本調子に成りがちなところはありつつも、最後の父と子のシーンは完全に入り込んだ感じで観ているこちらに岸川の苦しさが伝わってくるようでした。彼は結構のめり込むタイプの役者さんなんだねえ。座長だった長野くんは思った以上に声が良くて!もっとどーんと真ん中に据えて演出してやっても良かったんじゃないだろうか?久々の木下さんは可愛げあり迫力ありシリアスあり。シェイクスピアのセリフを朗々という木下さんにうっとりしたりして。そんでもって京さんはねえ、なんつーか、余裕な感じでしたねえ、終始(笑)私はただひたすら京さんを注視していたからかも知れませんが、中盤「コレ主役誰だっけ」と思うほど、黒沢正美がいかに立ち直るかに話が持っていかれすぎてる気がしたんですが。まあ、だからこそその日の本番に「演劇の神様」が降りてくるわけだし、あれはあれでいいのか。いやーそれにしても京さんファンにはおいしい舞台だ。ヤな奴なのに最後きっちりカッコイイなんてさああ、ずるいよずるいよ!今回の私の「はい時間今止めて!」なシーンは松明をバックに黒シャツで「To be,or not to be. That is a question」と見得を切るシーンです。そのあとの決闘シーンの白シャツも白シャツフェチにはたまらん!な感じだし、殺陣は見れるしダンスは見れるし、堪能〜〜〜〜、って感じですわ、ほんと。

でもね、劇中で「売れない役者」が語る様々な愚痴があるでしょ?あれってさあ、ホントは京さんたちこそ言いたい(言いたかった)セリフだったりするかもしれないじゃない?そう考えると複雑なものがあるよねえ・・・。