大阪の陣400年記念 大阪平成中村座 昼の部

◆女暫
七之助さん初役!昼の部開演から、出演者がずらっと並んで豪華な一幕です。もちろん予想していたとおり、七之助さんそりゃもうかわいくて大満足だったんですが、そのかわいさ以上に「この巴…マジで強そう…」と思ってしまったのは先月の呪縛から私が解き放たれていないからでしょうか(びょうき!)。そして長物の似合いっぷりよ…!あと、これも予想していたけれど声が良い〜〜。揚幕からきこえてくる声にほんとにうっとりりん。

個人的にこの演目で一番好きなのは、引っ込みの六方をめぐる舞台番とのやりとりとそのあと、なんですよね。舞台番と砕けた感じのお喋りになる楽しさはもちろんだし、その時々で違う当意即妙な受け答えはおおきな楽しみのひとつ。けれど、六方出来ないから兄さん教えて、のその兄さんと、そこから花道でツケが入って巴が六方を踏む、そこの虚実の入り混じる感じというか。あの、ツケの音が入るたびに、ぐ、ぐ、ぐ、と大きく見えるあの姿というのが、わたしがこの演目で一番好きな瞬間なんですよね。そこのところは、おふたりとも、これからどんどん変わっていくんだろうし、もっともっと大きくなってほしいなと思いました。

◆三升猿曲舞
15分ほどの短い幕ですが、いやもう堪能、堪能。勘九郎さんの舞踊が三度の飯より好きです。マジです。注文があるとすれば、もっと長くてもいい!ってことぐらいです。平場のよいお席で拝見できたので、踊る勘九郎さんをそれはもう隅から隅までなめるように見ていましたし、あの手でちょいちょい、って呼ばれるところとか完全に申し訳ない私今目線頂いてますよねえええ!!???って勘違いの花が満開になることこの上なかったです。関係ないですけど私勘九郎さんの踊りを見る時は基本ハンカチを口に当ててます。リアルよだれ防止(やめてもらえます?)

あの、所作台の音っていうか、勘九郎さんが踊る時のあの音がね、わたし異常に好きなんですけど、あの音だけ目つぶってても誰か当てられるんじゃないかってぐらい好きなんですけど、そういう人ほかにもいっぱいいるよね!?いるでしょ!?いるはずだ!今回の踊りではそこんところをいいだけ満喫できたのも嬉しかったなー。

奴たちとの絡みになって、立ち回る勘九郎さんが世界一かっこいいのはもう周知の事実なんですが、そこから幕が落ちて借景の大阪城天守閣、青い空にきりりと浮かび上がる勘九郎さんの姿、はい絶景!絶景キタコレ!しかもこの日、天守閣をかすめて飛ぶ飛行機まで重なって、いやー、平成中村座の醍醐味、これにあり。

しかしこの後ろを開ける演出、中村座でも(歌舞伎以外でも)何度となく見ているのに、毎回理屈じゃない興奮があるのがすごい。勘三郎さんがかつて紅テントを見て興奮したという、その「問答無用で観客の心をもっていく」演出が、その精神がこうして生き残っているのを感じられるのはやっぱり嬉しいですね。

◆狐狸狐狸ばなし
2年前の納涼のときに、この座組で拝見しましたね。そのときも思いましたが、いやー、扇雀さんの伊之助、良い!あのねっとり感はすごいです。もう絶品。上方の女方あがり、という素地もぴったりだし、笑いどころを鍋の底をさらうかのような勢いでもっていってましたね。中村座らしく客席をふんだんに使うのも楽しい楽しい。客席をふんだんに使うことによって、「暗転のための暗転」を極力感じないでいられるというのもすばらしい。でもって、この芝居は言ってみれば「ベタ」な笑いがふんだんに盛り込まれているんだけど、芸に力のあるひとが本気でベタをやるとこんなに面白いのかっていう、それをほんと実感しますよ。

七之助さんのおきわ、2年前に見た時よりもぐんと女っぷりに磨きがかかっていてますますよかった。というか、おきわって相当かわいい女ですよね…亀蔵さんの牛娘はもはや風格の域。勘九郎さんの又市も、あほの子っぷりも相当にあほの子でかわいかったし、後半の展開は美味しいんですが、個人的にあの役は前半もうちょっと抑えめでもいいと思ったりする私なのであった。ってかこれ前回観た時も同じこと言ってるねわたし、あっはっは

誰もが席を立つ時「いやー笑った笑った」といって劇場をあとに出来る、間違いない一幕。楽しかったです!