「空ばかり見ていた」

主演に森田剛くんを迎えての岩松了さんの新作。いやー岩松さんの作品は個人的にズバッとくるやつと掴もうとしてもつるっと手の中から逃げていくパターンがあって、今回は最後まで残念ながらつかみきれず…という感じでした。好きな役者さんが多いし、それぞれの会話は楽しんで観ているんですけども。

内戦状態にある日本のどこかで、廃校にゲリラ基地を構えている集団が舞台なんですが、銃やヘリコプター、捕虜といった生々しい単語に交じって、生保レディが保険の勧誘をしてしまう緊迫感のない一面もあったりする。主人公はその部隊のリーダーの妹と交際しているが、自分も前線に出たいという彼女はある日暴行を受けてしまう。

主人公とその妹に起こったこと、とその集団のタガが外れていくさま、それによって壊れていく人間関係。中でも隊員の母親と捕虜のひとりのやりとりが物語の展開にスリルを与えていて面白かったです。しかしあの母親のバックボーンというか、あのあたりの事情をうまく掴み切れなかったんだよなー。つるっと説明されて終わってしまった。

勝地くんのやった役どころが、チャラついているように見えて底知れないキャラクターで、彼の柄にも合っていてすごくよかったです。本当には何を考えているかわからない、というような怖さが端々に滲むのがよかったし、その怖さが後半かなり物語を牽引していたなーと。筒井さんも久しぶりに舞台で拝見した気がしますが、相変わらず年齢不詳な感じがあの存在の相容れなさとバッチリはまってた気がします。剛くんもよかったけど、個人的には彼はもっと叙情が強い台詞や舞台で見たい気持ちがあるかな~。

岩松さんの作品、そんなに得意じゃないのに、ツボにはまったときの快感が強くて忘れられずついつい見に来てしまう…っていうのを繰り返している気がしますが、それをさせる気になるのも岩松さんの力量なのかな~。