よかった映画2017

松の内も明けた今頃になってまだ回顧!いろいろ追いついてませんができることから一歩ずつだよ!
というわけで2017年に見た映画の本数は30本(リピート含まず)!過去最高です。しかしこのあたりが限界でしょう正直。って2年前も同じこと言ってましたね。とはいえ、昨年引っ越して映画を見る環境も変わってしまったので、今年はもっと少なくなる気がするな。
ということで2017年のベスト3…に絞れなかったのでベスト4はこんな感じです!

★「ローガン」
★「フリー・ファイヤー
★「ブレードランナー2049」
★「マイティ・ソー バトルロイヤル」

次点で「ラ・ラ・ランド」「ダンケルク」「ワンダーウーマン」あたりかな〜。あっでもホムカミも…(キリがない)。
ブレードランナー2049は見終わった直後から最高だ―!みたいな感じではなくて、長尺だし、なるほどそういう展開…とか思いながら見ていたんですけど、ラストショットの余韻がですね、自分でも意外なほど長く引きずってしまって、あのKの横顔をいつまでも思い出してしまうというか、引っ張られてしまうというか、鑑賞後時間を置いてもふと思い出してしまうシーンがあったりして、選びたくなっちゃったという感じです。
バトルロイヤル…というかラグナロクは何回でも見たくなる楽しさがあるというのも勿論なんですけど、個人的にこれを推したい最大の理由はラストファイトでキャラクターそれぞれにガンギマリにかっこいいショットがあって、んもーそこを見るためだけに映画館に行ってもいい!と思えるところ。しかしインフィニティ・ウォーどうなっちゃうんだろうね…心配だね…。
フリー・ファイヤーはなんといっても舞台を限定しワンシュチュエーションで見せきる展開で、さらに言えばこの銃撃戦待ったなしにもっていく展開に無理と無駄がなく、最後の収束のさせ方まで「おまえこういうの好きなんだろ?わかってんだよ」というぐらい脚本がツボ。ほんとうにうまい。キャストもキリアン・マーフィー、ブリー・ラーソンアーミー・ハマーなど豪華で、かつその豪華なキャストが対等に対峙するのもよかった。ワンシュチュエーション群像劇が好きなのはもう性癖の一種ですね。
でもって「ローガン」。2017年のベスト1と言われたらこれかなー。これをベストに挙げる理由はただひとつ、「コミック」で描かれた世界が「コミックを生み出したヒーロー」を支えていくという展開、それに尽きます。こんなにも美しい物語の円環があるだろうか。ヒュー・ジャックマンにとって最後のウルヴァリンということもありますが、長くアメコミ映画を支えてきたキャストのひとりとしてこれ以上ない幕切れだったんじゃないかと思います。

2018年はアメコミではなんといってもインフィニティ・ウォー、その前にブラックパンサーがありますし、そのほか日本公開が決まっている作品ではシェイプオブウォーター、スリービルボード、CALL ME BY YOUR NAME、Darkest Hourなどが今のところ楽しみにしている作品です!

2017年のベスト

総観劇本数50本(リピート含まず)。去年が37本で、「なんとなく50に届かないまでも40〜45ぐらいは観ておきたい」と書いていたので有言実行だぜイエイ。
ということで2017年に観劇したものでよかったもの5本(見た順)。

★「皆、シンデレラがやりたい」
★「天の敵」
★「桜の森の満開の下(八月納涼歌舞伎第三部)」
★「ファインディング・ネバーランド
★「大江山酒呑童子(吉例顔見世興行夜の部)」

「ファインディング・ネバーランド」は初日開けてシアターゴアーなお友達からの推薦がばんばん入り、それじゃあ…ということで楽前のチケットをとったら、あろうことか号泣のうえにも号泣して(文字通りしゃくりあげるほど泣いた…しかもそれが延々続くというおそろしさ)、ああ〜もう1回見たい、でももう見れない明日楽日だもの…からの翌日千秋楽のチケットを当日券で取って終電で高松まで帰るっていう、こんな無茶いつぶりだ!っていう無茶をしてしまった、その無茶をさせてしまう公演でしたね。見逃した方は日本版をぜひともだよ。

「皆、シンデレラがやりたい」、もし私がキャスト・アンサンブル賞みたいなものをあげられるならこの作品の猫背椿さん・高田聖子さん・新谷真弓さんのお三方にさしあげたい。序盤に3人の会話のみで相当長いシーンがあるが、ここがもう絶品のすばらしさ。なんとなく面白げな会話をつなげて芝居している気になっているひとはこれを見て顔を洗って出直しておいでよと言いたい。あと作品は挙げていませんが、「謎の変奏曲」の橋爪功さんのうまさにもしびれたなー。緩急自在とはこのことか。しみじみとうまい。こういう役者さんの仕事を見るためにお金を払ってるんだなわたし!と思える仕事師ぶり。さすがです。

でもって、2017年ふりかえったときにまずなにを思い出すか、っていったらそれはやはり桜の森をめぐるあれやこれやといいますか、忘れもしない6月2日の第一報と、帰宅してから一気呵成に書いた「贋作・桜」への思い入れと、初日を迎えたときの万感の思いと…みたいなことになるのかな〜と思います。まったくもって祭りであった。なにしろ無駄に思い入れていたのでほんとうに初日は自分でもよくわからないテンションのままでした。しかし、ほんとうに、こころから、よくぞ実現してくださったとおもう。大袈裟でなく自分が生きて元気で劇場に通える間にこうして願いが叶ったことに感謝しかない。私は幸せ者です。

花組公演「ポーの一族」


初日!元日に行ってきました。観劇歴長くても元日に芝居の予定を入れたのはさすがにはじめてです。大劇場自体は子供のころいちど「ベルばら」を観に連れてこられたことがあるんですけど、もはや記憶もおぼろ!なので、ほぼ初大劇場でした。宝塚でポーの一族をやる、と聞いてそれはぜひ見てみたいけど東京はチケットが取りにくい…じゃあ帰省中に見ちゃうのがいいんじゃないか!2日と3日は箱根駅伝があるから元日ね!というめちゃくちゃ気軽にスケジュールを決めましたが、いやー元日観劇、大いにアリですね。これから毎年元日は宝塚でもいい、ってそんな簡単にチケット取れたら苦労しませんってば。

以下原作を知ってる方には当たり前事項の連打ですが、ネタばれいやー!な方はこの先お気をつけて。

演出の小池修一郎さんの宿願でもあった「ポーの一族」上演ということで、本当にそれがよくわかるというか、原作からインスパイアされた的な、ポーの一族「ふう」なものでお茶を濁すことを一切しない、ガチンコ真正面からのポーの一族でした。そこがまずすごい。いやなにがすごいって、見た方にはわかると思いますが、あのエドガーが作る水車が原作そのまんまなのがすごいですよ。そこかよ!いやそこですよ。一事が万事というか、だってあれ、あの形、水車って一目見てわかります?記号としてあまり役にたっているわけではない(し、そのあとであの水車が活きるエピソードが原作にはあるが、そこは割愛されている)、もっとわかりやすいものでもよかったはずなのに、そこはもう絶対水車だったんでしょうね演出家の中で。なんというか、執念を感じましたよわたしは。

いったんメリーベルを解放したのに最終的にエドガーが彼女をこちらの世界に引き入れてしまうところ、オズワルドとユーシスの話をじっくりやるには尺が足りないということは明らかで、だったら違うエピを創作してもよいのではと思うところだけど、あんな駆け足でも原作通りにやるっていうのもすごい。たぶんね、尺さえあったら小池先生は沈丁花いたずらな小枝よっつってそこでもう1曲歌わせちゃってたと思うもの。あとあんな短い時間しか出ないのにユーシスの完成度が高い(衣装もあのまんまだ)のもすごい。

ポーの一族を舞台化するって聞いたときに、どこをクライマックスにするのかなっていうのが一番興味のあったところで、物語の大枠にエドガーとアランの足跡を語る関係者たちの話をもってきたので、だとすると「おぼえているよ魔法使い」あたりを持ってくるかな?と思ったけど、これも直球に「きみもおいでよ ひとりではさびしすぎる」の方でしたね。つまるところ、あの不思議に透明な少年の一瞬と、その刹那と永遠、そこにある孤独というのが小池さんにとってのポーの一族だし、それをあの板の上で表現したかったんだろうなあと思いました。

その一種の透明さ、というのは宝塚のスターにも備わっているところがあると思うんだけど、その類似性がこの舞台を原作の手触りがちゃんと残るものにしている大きな要因なのかもなーと。皆さん美しいのはもちろんなんだけど、ただ美しいだけじゃない、永遠に生きるのに、どこか刹那を感じさせる美しさというようなものがね、エドガーにも、明日海りおさんにもあったように思います。

演出としては、ラストのクレーン演出、マジか!?ってなったけど、その瞬間に周囲のオペラグラスがザッ!と音を立てて持ち上がったのをみて「こ、これが噂の…!」と思いました。ほんとに「ザッ!」って音がするのねあれ…あと分身エドガーにもそういえばびっくりしたな…でもこれはエリザベートでも見た…とも思いました(笑)

リーベルの「アラン、わたしたちといく?時を超えて、遠くへいく?」がほんと漫画のまんまで、あとエドガーがアランを迎えにくるシーンの、大きな窓がゆっくりひらくところとか、そう!それ!ってなりましたね。みんなああいう場面、ああいう音、ああいう風を想像しながら読んでたんだねって不思議な気持ちになりました。

衣装が非常に華やかで、キャストのみなさんあの二次元衣装をばっつり着こなしていらっしゃるのがさすが!学校の制服とかさー、あのブーツインがあんなハマるのずるいでしょ。シーラとかほんとに漫画から抜け出てきたみたいだったもの。アラン役のひとのすっきりした佇まいもよかったなー。アランにはちょっと大人びてる感じもあったけど、繊細さがそれをカバーしてあまりある。明日海さんは美しいのはもちろんだけど、走り方がぴょこぴょこしてなんか妙に少年ぽさがあったのがかわいかった。

芝居のあとに華やかなショーがあって、個人を認識できていないのでたいへん申し訳ないながら、いやー出てくるひと出てくるひと皆華があって見ごたえあるううう、と楽しみつつ、例によってここぞというところでザッと持ち上がるオペラグラスの波におおお…と感動したり忙しかったです。元日だからなのか、毎公演そうなのかわからないですけど、明日海さんからごあいさつがあり、そのトークのほわほわ感とショーのドヤ感のギャップも楽しかったなー。そうそう、初日は萩尾望都先生がご観劇で、紹介されて立ち上がり一礼されるモー様という貴重なものを見てしまいました。

観劇前から観劇後までまるっとふくめて楽しかった!いい1年のスタート、よい観劇初めでいうことなしです!

「ロッキー・ホラー・ショー」

いのうえさんの演出で上演されたのが6年前になりますか、新たに河原総代を演出にすえての上演でございます。主演は同じく古田新太

いのうえさんの演出も楽しかったけど、個人的には河原さん演出の方が肌に合った感じがありました。河原さんの音楽センスというか、音楽面での演出力を信頼しているというのもありますし、あと「観客巻き込み型」の芝居での絶妙な勘所をさすがに総代はおさえてらっしゃるというか、うまーいことこっちの手を引いてくれて、波に乗せてくれる感じがありました。このあたりはさすが餅は餅屋といったところなのかも。あと、キャストも音楽的に強いメンバーがそろっているのもありますし、ゲゲゲイの振付も好きなので、「好き」要素がうまーく詰め込まれた幕の内弁当のような楽しさがありました。
 
古田さんが安定の出来なのはいわずもがなですが(あの登場シーンの千両役者感すごいよね)、個人的にMVPをあげたいのがジャネット役のソニンちゃんとブラッド役の小池徹平くんのコンビ。オー!マイキー!を彷彿とさせるような「絵に描いたアメリカン」を絶妙な温度で演じてみせるところ、そこからの展開、いずれも二人に得がたいキュートさが備わっていてすばらしいの一語でした。このふたり、キンキーブーツでも共演していたけど、一度王道ミュージカルラブコメを真正面からやってみてほしい。なんというか、ゴールデンコンビの趣があるとおもう!あとアヴちゃん、ほんとにバービー人形みがすごい。なにあのスタイル。絶対芝居心あるひとだと思うのでこういう機会がもっとあるといいなーと思いました。

あとね!幕間に錚々たるグラムロックの名曲がかかるんだけど、そこでイエローモンキーの「アバンギャルドで行こうよ」流してくれて…ほんとうにありがとうございます…もう足を向けて寝られない!

大楽前日ということもあり、すでにわきまえた観客の方も多くいて、ノリノリな客席だったのもよかったです。目の前に持参の(グッズではない)強めペンラをお持ちの方がいたんだけど、使いどころを完全に把握していたのが楽しかったです。

「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」


「フォースの覚醒」に続くエピソード8!正史スターウォーズサーガ2年ぶりの新作です。前作のJ.J.エイブラムスから監督を引き継いだのはライアン・ジョンソン

前回レイがルークを訪ねていくところでto be continuedとなったわけですが、もうまんまそこからのスタートです。なのでフォースの覚醒(を見ないでこれを見に行こうと思う人がどれだけいるかわかりませんが)は絶対見ておいた方が良いというよりも見てないとなんのことだかぜんぜんわかんないと思います。前回登場した主要キャラクター、レイ、フィン、ポー、そしてBB-8が中心となるのはもちろんですが、今回はルーク・スカイウォーカーがついにその姿を現し、過去の因縁と向かい合うという大きなプロットが中心にあります。やっぱりねえ、そんなに旧作に特別な思い入れがなくとも、ルークというキャラクターはやはり(劇中で本人も言うように)伝説、神話、一種のイコンであって、それをとりまく物語というのはやっぱり惹かれてしまうものがありますよね。

しかし、個々のシーンではすごく好きなところもありましたし、次から次へとのジェットコースターなのでじゅうぶんに楽しめましたが、個人的にはいまいち釈然としない部分が残った…というか、物語がわたしのツボをことごとく外した感があるというか。物語が美しい流れを描いていないように思えた部分があり、かつ、それにしては尺が長い、というのが気になったところ。

まず、基地からの脱出を試みたレジスタンスが、冒頭で武器の大半を失う描き方からはじまり、ファースト・オーダーの追跡を振り払うための極秘作戦を立て(ポーは自らが指揮権をとることを期待したような素振りがあり、レイアの代役となるホルド中将への不信感が描かれる)、その作戦が潰え、とはいえホルドにはちゃんと目論見があり…とレイを除くキャラクターたちの流れが描かれるんですけど、そのどれもがうまく繋がっていないというか、どうにもマッチポンプ感が否めない。個人的に、こうした大局において「内輪もめでピンチを招いて火消しに特攻精神を見せる」みたいなのに全く燃えられないタイプなので、うん、中将とポーはちゃんとお互いのビジョンを話し合えよ…って思うし(めちゃくちゃベタだが、内通者がいることを疑って機能不全になるほうがまだしも飲み込みやすい)、その中将の目論見をぶっ潰して対抗手段もなく味方がただ撃たれるの見るしかないって相当な絶望的状況を生んだのが「極秘作戦」の失敗からきていて、その「極秘作戦」の失敗ももう少しなんか…書きようがあったのでは!?コード破りが裏切るのがダメだとかではなく、むしろそういうのドンとこいだけど、この宝石のようなキャラクター(ベニチオ・デル・トロなにしろどちゃんこカッコいい)をこんな書きぶり!?という気がしてしまう。

そしてそのすったもんだのあとクレイトでの最終決戦になり、しかしそこまでで相当の尺を使っているので、観客の集中力がいちばんいいところで切れがちになるっていうのもあまりよくない。長いからダメだというわけではないけど、長いならそれなりの密度を保たないと…という気がしてしまいました。

レイとルークのパートについては、あのレイとカイロ・レンの「魂の交信」が多すぎた。ああいう場面はここぞ!というときに入るとすげえ効果的だけど、繰り返されるとその次元のラインを観客が見失いがちになると思う。レイというキャラクターもカイロ・レンというキャラクターもどちらも今までにはいなかったタイプで大好きだし、ふたりが光と闇で双方から手を引き合うみたいなのはそれぞれの危うさも相俟ってスリリングでよかった。スター・ウォーズはひとつの血脈を描いてきたサーガだけれど、新世代においてはそうではない、ジェダイとは血ではないという方向性を見せるのはいいと思うし、時代に合った描き方だなあとも思う。思うんだけど、とはいえやっぱりルークの描き方に不満が残るのも事実です。非常に下種な言い方をすれば、このエピソード7〜9には、エピソード1〜3が絶対に切れなかったカードが3枚あって、そのカードがハン・ソロ、レイア、そしてルークで、しかも時を経たことでそのカードの価値はいや増している。その中でもいちばんのドラマを背負ってきたルーク・スカイウォーカーというカードをこんなふうに使ってしまったのか…という気がしてならない。最後、たしかにルークは文字通り一筋の光とでもいうべき存在感だけど、かれはレイを本当に導いたんだろうか?という、せめて最後にかれがなした仕事をレイに刻みたかった気がしてしまう。ジェダイとは血ではないというのならなおさら。

もちろん、BB-8はかわいいし、チューイとルークが再会するところ最高だし、BB-8はめちゃくちゃ賢いし、ルークがR2-D2と交わす会話はすべてが落涙必須というかルークがここにおいてもっとも心安く話しているのがR2-D2というその事実が尊いし、あんな映像みせちゃうR2-D2は卑怯で最高にかわいいし、ルークがC-3POに見せるウインクでかるくしねるし、そしてBB-8はかわいい。なんかドロイド絡みのことしか書いてないやないか!ポーもなんだよ俺のドロイドは?とか言っちゃってんもーかわいいかよーーって感じです。結論:ドロイド最高。話題沸騰のポーグも確かにかわいいけどああいうのには強い(食指が動かない)わたし。それよりもあのキラキラ雪狐さんのほうがきゅんとくる。そしてファーストオーダーはあの最高指揮者のもとでなんだかこれから苦労しそうだねと思いましたマル

なんか、今回ライアン・ジョンソンが脚本もシングルクレジットなので、うーんあまり私と趣味が合わないんだろうなーという気持ちです。そしてローレンス・カスダン帰ってきて!と思ってしまう…(もともとカスダン贔屓なのは否定しない)。次はJJが監督復帰するそう。いやーどうなることやら。ともあれ、いろいろああだこうだいいつつも、これだけ爆発的なコンテンツ力を持った作品をリアルタイムで公開を楽しめるのはありがたいのひとことです。そりゃエピソード9のあとも3部作やっちゃうよ!とか言い出すわけだよ!

「吉例顔見世興行 夜の部」

  • 京都ロームシアター 1階1列14番

南座改修中につき、今年の顔見世はロームシアターで!岡崎ほんと雰囲気あって好きなんだけど人が多い、よね…(当たり前)。
「良弁杉由来」。初見です。鴈治郎さんの福々しい大僧正とその母を演じる藤十郎さん。歌舞伎のお得意のパターン「実は」母子という展開なんですが、まあもちろん観ている側はわかってみているわけで、昔は苦手だったこのパターンもすっかりニコニコ楽しめるようになりました。東大寺二月堂に本当にあるんですね、良弁杉。というか、その実在の木の逸話がこうして作品となって残っているというべきか。一度見に行ってみたいです。

「俄獅子」。三兄弟そろい踏み!華やかな一幕でした。なんつっても時蔵さんが無双でした。ご兄弟をこうして歌舞伎の舞台でそろって見るのは初めてでしたが、歌之助さんはまだ青年と少年の間みたいな雰囲気もあり、かとおもえばお兄ちゃんはますます風格が出てきてるし、これからどういう芝居を見せていってくれるのか楽しみです。

「人情噺文七元結」。芝翫さんが左官長兵衛、扇雀さんが女房お兼、手代文七を七之助さん。いやー、しみじみよかったです。終わった後、うしろに座っていたご夫婦がやっぱり年末はね、こういうのがいいね…と話しておられたのが聞こえてわかるう〜〜〜とひとり心の中で頷きまくった。冒頭の長兵衛とお兼のやりとりからふたりの息がぴったりで面白いし、文七と長兵衛のやりとりでの逡巡、文七のちょっと抜けたような人の好さ、長兵衛の「死ぬんじゃねえぞ!」の捨て台詞、終幕の大団円と、みっちりとつまったいい芝居でした。あの「死ぬんじゃねえぞ」はやっぱりぐっと胸が熱くなるものがありますし、そのあとの長兵衛宅でもあくまで陽な雰囲気のなかでお兼と丁々発止の言い争いがあって(ここの扇雀さんが絶品すぎ)、しかも最後の最後に鳶頭で仁左衛門さまが出てきて男前にころされるっていう隙のなさ。劇中で口上もありなんとも和やかな幕切れ。

でもって、目の前で繰り広げられる芝居を堪能しながら、自分でもよくそのきっかけがわからないんだけど、突然勘三郎さんの長兵衛が鮮やかによみがえってきて、芝翫さんとくらべるというのではなくて、なんだかふたりが重なって見えるような…ゲラゲラ笑いながらボロボロ泣くっていう、なんだか自分でも不思議な感じでした。12月の南座だからなのか、あの「死ぬんじゃねえぞ!」の台詞なのか…どんなところにも思い出は潜んでいるけれど、悲しく思い出すのではなく、思い出の先の未来と共に懐かしむことができたような気がします。

大江山酒呑童子」。本日の(私の)メイン!顔見世の昼夜どっちを見るか、と考えたときに昼の部の方が勘九郎さんが出る演目が多い、でも酒呑童子は…み、みのがせねぇ〜〜〜!!!ということで行ってきたのよ。大正解。大正解の大好物。出から幕が閉まるまで好きなところしかない。しかもお席が最前の花横だったので、あの花道で最初童子桔梗の花?*1を持って舞うところ、いやもうこれあたし完全ロックオンされてるやん!みたいな角度で拝んだのでほんとあそこで取って喰われても本望みたいなレベルだった。お声がね〜、ここんとこずーっといまいち本調子じゃないというか、すぱーんと響く声が出なくて(後から調子が出てくるんだけど)それはずっと気になっています。とはいえ、それを補ってあまりある、あの、あの、踊りの素晴らしさ…!!!!もうこれを2時間ぐらいやってくれていいんだよ(お前がよくても勘九郎さんはよくないよ!)、ほんとにこの人の鳴らす所作板の音を着信音とかにできない?ダメ?ぱっつん前髪の下できらりと覗く人ならぬものの目、最高。酒を催促するかわいい素振りもよいが、飲む一瞬前の口を三角にしてニヤァ…と笑う顔、最高。葛桶に腰かけて踊る足さばきの見事さ、最高。これ、うしろで小三郎さんが葛桶が動かないようぐっと抑えてるんだよね。そういうのが見られるのも前方席の楽しさ…。酔った童子の舞になるところ、一瞬鬼の本性が顔にふわっと浮かんで、それをさっと隠して踊るんだけど、そのときの裏の顔がまたもう絶品なのよ奥さん。絶品!なにこれ!マジで天を仰いで神に感謝案件だよ。花道で頼光と向かい合うところも最高だし、あの狭く短い花道であの跳躍!惚れるしかない。惚れるしかない。最後袴の裾を片方一瞬でさっと足に巻き付けて(踏まないようにだね)舞うところも、なんかもうすべてがありがたい…て拝みたくなるほど好きな瞬間の連続でした。最後の仏倒れも素晴らしかったんじゃない!?今回頼光が七之助さんで、凛としながらも「この大将、守ってあげたい」感があったのもよかった。大河ドラマの撮影がスタートすると舞台のほうはしばらくお休み…でもちろんさびしいに決まってるけど、その間この飴でも舐めとけって言われたんじゃないかって勝手に思い込んじゃうほど私にとっての御馳走演目でした。延々舐めてられる。味なくなるまでしがんでいられる。こういう勘九郎さんが好きでたまんないんですよ。人であるような、ないようなところを見せる、それを信じさせる抜群の身体能力と踊りのうまさ。はー!もう!好き!(告白)いやほんと、年の瀬の顔見世、これ以上ないほど堪能しました!

*1:ツイッターで「鬼あざみ」ですよ〜と教えていただきました!ありがとうございます!

「ローガン・ラッキー」


スティーブン・ソダーバーグ監督。チャニング・テイタムアダム・ドライヴァーダニエル・クレイグとキャストも豪華!

アメリカの片田舎でいかにも冴えない生活を送るローガン兄弟。兄はアメフトの花形選手(つまり学生時代ヒエラルキーのトップに君臨していたということだ)だったが、膝を壊して今はなかなか安定した仕事に就けない。弟は戦争に行き片腕を失ったが、義手で地元の店のバーテンダーとして働いている。地元では「ローガン家の呪い」と言われ、人生万事塞翁が馬、幸福と不幸は糾える縄のごとしを地で行く一家として有名。兄弟には美容師として働いている妹がいて、その妹には悪いことが起こらないように祈っている。あるとき、レース場の工事現場で働いていたローガン兄は、膝が悪いことを見とがめられ、「保険料がよけいにかかる」ことを理由に解雇されてしまう。工事現場でレース場のお金の流れを知った兄は、弟と一攫千金の計画を立てる。

やることは銀行強盗に近いのに、コン・ゲームのような装いがあって、おしゃれじゃないのに粋で、しかも登場人物みんなに「よいこと」を降らせてくれる展開で、でもスパイスも忘れない…って上手!上手か!と手を叩きたくなるうまさを堪能しました。いやーもともとコン・ゲームが大好きなので、最後の方はひや〜〜よくできてる〜〜と唸りっぱなし。

ジミーの娘がコンテストで、リアーナの「アンブレラ」を歌う予定だったけど、お父さんが来てくれたのを見てかれの好きな「カントリーロード」を歌うところ、あの声の細さと、かさなっていく歌声にぐっときたし、あの歌、よく考えたら1番の歌詞しかよく知らなかったんだな…と。このアメリカという巨大な国の田舎で安い酒を呷りながらなんとか日々をやっていっているひとたち、すなわちジミーやクライドの心情にこんなにも近い曲だったのかと思いましたし、あのシーンの切ない美しさがこの一種義賊めいた彼らの物語をぐっと締めてくれていたと思います。

盗みの最中の3人組のどことなく緊迫感のないやりとりもよかったです。グミで爆弾作るってわかってぶーたれるローガン兄弟に説教&解説かます(余裕か)ジョーとか、もどってきた爆弾受けとめちゃうクライドの表情とか笑ったな〜。あと花形レーサーでセバスチャン・スタンがキャスティングされてたんだけど、「優雅なトップアスリートの生活プロモ」みたいなあれこれに爆笑しましたね。

アダム・ドライヴァーが演じた弟のクライドがほんと、かわいいつーかなんつーか…かわいい…あの「まえに兄貴のカリフラワー!が出たときにはひどい目に遭った、けどベーコンを僕好みに焼いてくれたし、ひとりで計画立てるのたいへんだったよね、だから話を聞くよ」ってとこほんと好きにならずにいられないですよ。チャニング・テイタムはなにげに見る度に違うタイプの映画に出演しているような気がして、イメージが固定化されない、それってすごいことだよなーと思います。あとボンドを離れたダニエル・クレイグはめちゃイキイキとべらんめえな兄貴をやっていて楽しそうでした。こういう役もまた見てみたい。

囚人の立てこもり理由にゲーム・オブ・スローンズネタがあったりして、ああっ、早く見なきゃ…と思いながら未見の私。ぜったいはまる…っていうかハマる気しかしないのよね…。