「エレファント・バニッシュ」

題材になった村上春樹の短編3つは未読のまま見に行ったのですが、いやー想像と違ってけっこう楽しめた!東京公演の評判はキビシイものがあったみたいで、村上春樹だしコンプリシテだし(ってコンプリシテ知りませんけど)、遊園地再生事業団の時のように「まったく右も左もわからない」ことになったらどうしよう・・・とちょっと心配していたんですけれども。いやじゃあ「わかった」のかと言われると正直わかってないんですが(笑)、でもなんというか、作品の世界をつかまえるちょっとした手がかりは見えたかな〜って感じ。わからなさもまた心地よし。演出も斬新で見ていて楽しかった。

実は見終わったあと本屋に駆け込んで「象の消滅」「パン屋再襲撃」「眠り」が収録されている文庫を買って読んでみたんですけれども。多分私、舞台を見る前にこれを読んでもきっとピンとこなかったんじゃないかなあという気がした。「パン屋再襲撃」なんて、おお、この短編をあんな風に立ち上げたのか!ってなんだか新鮮な驚きがあったりして。村上春樹の小説って、なぜか私の好きになる男は大抵村上春樹が好きなので今まで無理矢理読まされたのもいくつかあるんだけど、ちっとも「手がかりがつかめない!」って感じだったのに、今日の舞台はあ、なんか心に引っかかるものがある!と思えたもんなあ。村上春樹が凄く好きだというひとの気持ちがちょっとわかる気がした。ただ、ハッキリ意味に裏打ちされて進行する訳ではないので人によっては受け入れられないと思うかもなあ。友達を連れていくのは躊躇います(笑)。

映像を多用しているのと、朗読部分が若干多いかな?っていうのはちょっと気になった所ではあるんだけど、それでも役者さんのうまさはきっちり発揮されてるし、チームワークが良くてバラバラの個性を持った方ばかりなのに不思議な統一感があるし。これがイギリスでの合宿の成果というやつなのかしら。吹越さん相変わらずクールな佇まいで素敵でした。堺君の力業とそれに負けない発声、存在感には惚れ惚れ。役者さん皆さん本当に声が良くて、それがモノローグが多くなっても苦痛じゃなかった要因だと思うなー。個人的には久々にピシッと締まった客席だなあとも思った。本当に咳ひとつ物音しないような感じで、舞台のテンションをちゃんと受け止めていたなあ、と。ちなみに大阪公演初日、客電ついても拍手やまず、客席にいたマクバーニー氏が舞台にあがって挨拶して下さってました。