「狐狸狐狸ばなし」トム・プロジェクト

南大阪の片田舎にある公共ホールで1日限りの公演。なぜここで?客層もケラファンor熱心な芝居好きと思われる人から、地元だからたまたま寄ってみた風の家族連れまで千差万別。年齢層も4,5才かと思われるお子ちゃまもいれば手を引いて貰わなければ席に着けないお年寄りまで実に幅広かった。いやー果たしてどういう風になるんだろうとなんだかドキドキしてしまったが、笑いへの反応が若干控え目かな?という以外は実にうまくみんな芝居を楽しんでいたんじゃないだろうか。カーテンコールの拍手の熱はおざなりではなかったと思う。

脚本としては「古典喜劇」に類するようですがそれを忘れるほどケラさんテイスト満載で私には非常にしっくりきました。あの、見舞いに来た友人が妻に浮気されて自殺を図った友達に話してあげる逸話、という外枠はそのままなんだろうか。なんだろうねえ。それにしてはその部分がすごくうまくケラさん風味に処理されていて全然違和感なかった。「狐狸狐狸」なんてタイトルなんだから、最後は読めてましたけれども、それでもちゃんと最後まで面白いのは役者の力もあるだろうなあ。

篠井さんもラサールさんも勿論うまいし、特に篠井さんは見事なコメディエンヌぶりでラストの三味線抱えて高笑い、もなんだか一種壮絶な凄味すら感じさせてさすが!だったんですが、個人的には六角さんに座布団全部、な感じ。本当に、つくづく、六角さんはうまい。ある意味、うますぎる。声がいいし、バカキャラ→キレキャラ→実は、な切り返しも見事。声だけでキャラクターが伝わってくるような感じすらしました。六角さんのひとり芝居とかないのかなあ。めっちゃうまいと思うよ。是非とも見てみたい。板尾さんは何度か舞台でも拝見していて、あのとぼけた味がなんとも絶妙なんですが、折角の喜劇、もっと貪欲に笑いをさらってくれてもよかった。

音楽の使い方のうまさ、映像の格好良さもそのままで、ナイロンの公演と言われても違和感の無いほどケラ・ワールド。でもお茶の間でも馴染みのあるキャストで、ケラさんほど毒の強くない芝居だからこそ幅広く楽しめるものになったのかな、って気はする。ここにも「真の商業演劇」へのヒントがひとつあるのかもしれないなあなどと、思ってみたり。