「帰ってきたマイ・ブラザー」

SISカンパニーのプロデュース公演で、キャストが豪華なんだけどがっつり演劇というよりはショー的な色合いの濃い作品。かつてそこそこ売れた兄弟コーラスグループが、40年ぶりにコンサートを行うことになったが…というのが設定で、水谷豊さんが長男、段田安則さんが次男、高橋克実さんが三男、堤真一さんが四男というキャスティング。ここにかつてのマネージャー役で寺脇康文さんも出演。

自分でも鈍感にも程があるなと思うけど、寺脇さんが出てきて「うわーマジで豪華なキャストやな」と思ったものの、すぐに「相棒」と結び付けられなくてほんまスマンことをした。そうね!たしかにこれ、相棒ファンのひとにはたまらんあれだね!

水谷豊さんはやっぱりスターの芝居というか、観客にいかに見せるか、という立ち位置である一方、段田さんは写実の鬼みたいなトーンで芝居を作ってくるし、克実さんも堤さんもそれぞれ芝居のトーンが微妙に違って、ある意味四兄弟のカラーが芝居の違いにも出ているようで面白かったな。育ってきた環境が違うからってやつを目の当たりにしているというか。それにしても、段田さんのうまさはちょっと群を抜いてるなとは思いました。なにより他の台詞を「聴いてる」力がすごい。だから全部の会話、全部の返しが的確。舌を巻きます。

物語の筋としては緩い部分もあるものの、この四兄弟のグループ(ブラザーフォー)をずっと好きでいた姉妹のほうのストーリーラインにうっかり絆されちゃって参りました。また演じるのが池谷のぶえさんと峯村リエさんてのがさー!うまいのうまくないのってうまいんだよ!!ずっと同じものを好きでいるって口で言うほど簡単じゃない、そのことを身をもって知っているし、叶わないかもしれない夢を抱えて、それに振り回されたり持て余したりそれでも諦めきれなかった思いを抱えたことのある人間は、そりゃどうしても肩入れしちゃいますって!

最後にはビシッと赤タキシードでキメた4人が歌ってエンディングになるんですけど、いやーこうなると(どうなると)堤さんのスタイルのよさ際立つし、あんな男前がちょっとはにかみつつ楽しそうに歌って指差しとかくれちゃった日にはおま、おまえ、やっていいこととわるいことがあるだろう!という気にもなろうってもんです。何が言いたいかってやっぱむちゃくちゃカッコイイな堤真一

演者が思わず笑い落ちちゃったりとか、一瞬やりとりのテンポが崩れるとか、そういう部分も散見されつつ、まあ最終的に楽しいからいっか!みたいな気持ちで劇場を後にできるのも最後の歌の力が大きいかな。あれだけの芝居巧者を集めたうえでの神々の遊び…!みたいな感じで楽しめました。