「五月大歌舞伎 昼の部」

「菅原伝授手習鑑」
「車引」。なぜかぐっと時代が遡って平安の時代ではないですか。道真・・・時平・・・ああ、「陰陽師」で話が出てきた気がするよ!時平って確か博雅の爺ちゃんじゃなかったっけ?(←岡野版)なぜか時平が人外魔境の大物になっていてびっくりしたが、それよりも勘太郎くんの烈しさにびっくりした。血管切れそうな熱演でしたなあ。

「芋掘長者」
楽しかったあ!大好きですこういうかわいい話。お話もわかりやすいし後味も良いし。三津五郎さんがわざとへたにおどったりするところがめちゃくちゃうまい。へたなのにうまいとはこれいかに。芋掘り踊りも愛嬌たっぷりでかわいいのなんの。三月の「鰯売」を思い出すようなほのぼのエンディングで心もほのぼの。

「弥栄芝居賑」
中村座」の初日に男伊達、女伊達が祝いに駆けつけるというなんとも「ご馳走感」たっぷりな一幕。両花道こしらえて左右にずらっと綺羅星の如く輝くスターさんたちが!みたいな。それぞれの口上が工夫されていて楽しかったなー。染さまはやはり阿修羅ネタでした。それにしてもずらりならんだ女伊達のなかでも玉三郎さんの美しさは際だつわ・・・。

「髪結新三」
どっちかっつーとピカレスクロマンという感じの筋立てで、多分新三が格好いいんだろうけど実はあんまり格好良く見えなかったんだよなあ。役の中で印象に残っているのは家主長兵衛の三津五郎さんと勝奴の染五郎さん。三津五郎さんと勘三郎さんの「鰹半分もらっていくぜ」のやりとりは最高。勝奴は染五郎さんにしては珍しい、けちーな小悪党って感じの役で、その調子の良さがなんとも言えない小粒感でよかった。
意地張って見栄張って、ろくな最期が待っていないと自覚しつつも粋と見栄を頼りに生きる男、なーんて結構好きな題材だけにもっときりっとした感じが欲しかったかなーとか思いました。