「最悪な人生のためのガイドブック」

  • シアタードラマシティ 15列42番
  • 作・演出 鈴木聡

「最悪な」は「人生」にかかるのでしょうか「ガイドブック」にかかるのでしょうか。どっちもなのかな。いわゆる「勝ち組」からは程遠い人たちの、人生をやっていくための「ガイドブック」。読んだら元気が出てくるかも?ただし、「勝ち組」になりたい人にはお役に立たないかもしれません。

ドイッチとオノッチ、実はそっくりな人物が私の回りにいるのですよ〜。だから観ている間自分の知り合いに二人が被って被って。しかも結末までなんか似てるの!
オノッチが「仕事だってわかんないけど、とにかく俺はシェフになるって決めた。だからここで頑張る。可愛い子いっぱいいて目移りするけど、おれはキヨッペに決めた。だから結婚して二人で頑張る」と言うけど、いい男の子だよなあ、と本当にじーんとした。でも私、ドイッチの「決めない勇気」ってのもわかるんだよなあ。私はそんな勇気がない人間なので、言ってみれば「ちゃんと」就職して手堅く勤めてはいるけれども、でもそういう決断することで何かに属する安心感、的なものを手に入れてはいるわけですよ。「何者にもならない」って実は結構キツイことのような気がするんですよね。

お話的には、個々のシーンには満足しつつもちょっとファンタジーな展開かなとか思いましたけど、「決める勇気」と「決めない勇気」というのは凄く頷けるなあと思ったのでした。

あと、ミュージカルというよりは「音楽劇」だよね、とも思いました(笑)なにをもってミュージカルというか?というのはそりゃあまあ人それぞれでしょうけども、でも音楽よりも台詞が印象に残っているしなあ、と。その中でも印象に残ったのは「待ちながら思うこと」「エレベーター」とかかな。

さて、私の好みの傾向を知る方々には読まれてしまっているでしょうが、個人的に今回の草刈正雄さんにずっぱまりでした。なんなんでしょうか、あの弾けっぷり。自由すぎだ。思い出し笑いで帰る道々すっかり変な人だったよ私は。共演の役者さんたちが次々と繰り出される草刈“それは卑怯だ!”演技に本気落ちしていくのもわかるってものです。もちろん「エレベーター」のショウストッパーな歌声も素晴らしかった。ああいうちょっと胡散臭いぐらいの男前だからこそコメディやるとはまるよねえ。

「BOYS TIME」以来となった森山未來くん。最初に拝見したときもこの子踊りすげえ!と思ったんだけど、今回もその踊りの素晴らしさを堪能できて満足。歌もいいし芝居もできるし、まさに次世代のスターだ君は!小林隆さんや三鴨絵里子さんのキャラもよかったな。川平さん、なんとなく以前に拝見したことがあるような役回りでありつつも、憎めない魅力ふんだんで人柄が出るなあと。愛されキャラですよね。