「東海道四谷怪談 南番」コクーン歌舞伎

2年前の納涼で一度勘三郎さんのお岩さんを拝見したことはあり。その時は大がかりな演出てんこもりの隠亡堀や蛇山庵室よりも、浪宅でのお岩さんの情念炸裂が印象的だったのですが、今回は本水を使ったセットが組まれていることもあって後半の盛り上がりっぷりにすっかりやられてしまいました(笑)

とはいえ、間近で表情を拝めたということもあって、お岩さんの凄まじさに鳥肌立てたりもしてたのですけども。鏡を見るときの目の動きとかね、あのお歯黒を塗るときの何ともいえない怖さとかね・・・ほんとゾッとした。有名な髪梳きの場面も、お岩さんの情念が匂い立ってくるようでホント怖かったなあ。あと、やはり歌舞伎座とかに較べるとコクーンは狭い小屋だから、場内が暗くなってお岩さんが突然客席に現れたりする演出のときはより緊密感があってよかったです。しかも、あとでみたら床を破って出てくるような仕組みにしてあるらしく、そりゃ驚くよ・・・とか思いました。

最初の浅草境内のシーン、高さのあるセットを組んでいて印象的。舞台の両側に揚幕を吊した小屋が連ねてあるセットがあって、そこから役者の出入りがありました。コクーンでは花道がないのであの揚幕の音が普通では聞けないんだけど、舞台上に作ってしまうとは!

しかし何度見てもこの四谷怪談、伊藤家の面々がいちばんタチ悪いんじゃないかと思えて仕方ない。そりゃ伊右衛門も悪いやつだけどさ、悪だと自覚している悪じゃないですか。伊藤家の人たち「それの何が悪いの?」風情だもんな〜!そりゃ祟ってやりたくもなる。

蛇山庵室の立ち回りの前には、楽屋番の方たち(笹野さんと七之助くん)から、平場のお客さんにポンチョと防水シートの使い方のご説明が。ポンチョだけかと思っていたら、シートまで配られ、しかもこのタイミングで飛び込みますからね!と使い方のレクチャーまであってちょっとびびる(笑)。

実際最後の立ち回りは、紙吹雪というか紙降らしは凄いわ水は飛び散るわ、もういやでもテンションあがるわ!なケレン味たっぷりの演出がこれでもか!と続いて、しかも飛び入りなんてあったものだからもうそこからは祭りですよ!状態。

でもあの堀の中で立ち回りしてくれるので、そこで見得を切ってくれるとちょうど客席の目線が、役者の顔の高さにくるんですよね。つまり目線の高さのまま役者の見得を拝めるわけで、これはもう普段は絶対にありえない贅沢さだなあと思いました。

決して楽しいお話ではないのに、終わったあとの高揚感、「あーええもん見た!」な満足感の高さはすごいです。
いや本当歌舞伎って底が知れない!