「僕たちの好きだった革命」KOKAMI@network

ねたばれありです。

革命、学生運動、しかもラップ・・・という要素だけを聞いて、特にラップはあのピルグリムの時の黒歴史が甦ってきたりもして観る前は若干暗澹たる気持ちになったりもしたんですが、いやしかし実際の舞台は総じて楽しめました、という感じです。

デティールの細かいところで「え?」というような所もありますが、主演を中村雅俊さんにもってきたことが最大の勝因だったのかなあと。未来を信じているから、とあれだけ熱い台詞を語ってちゃんと説得力のあるあの年代の役者さん(この舞台に限っては、やはりあの年代の人がやることに意味があるだろうと思う)として右に出る者はいないのではないか、と思うほどの存在感だった。

2幕は「歌」が大きなウェイトを占めますが、といっても物語を歌に任せるのではなくて、歌によって劇世界をより浸透させるという感じの使い方で、GAKU-MCさんのラップも、中村雅俊さんの唄う「私たちの望むものは」も非常に効果的だったと思う。

たとえば夏フェスとかに行くとですね、それはそれはもうポジティブで肯定的でそれこそ素で口に出せば何熱くなってるの?と言われるようなリリックに何万人という若者が夢中でコール&レスポンスしている姿があるわけで、愛と平和!と5万人が叫んだりもするわけで、つまりそれは若者のエネルギーというのはいつの時代も一定で、回路さえ見つけてやればそのエネルギーは容易く放出されるのだ、ということなんだろうと思う。だから、自分たちの好きなラッパーが煽ることで祭りの熱が容易く上がっていく、というのはすごく頷ける展開だなあと思った。

あと、これは「ごあいさつ」にも関係あることだけれども、私も結局「祭りの準備をすることすらない人生はいやだ」と思ってる節があるのだろうと思う。だから、あの文化祭の夜に何かを賭けてしまう気持ちというのはすごく共感出来るものがあった。

劇中でしつこいほどに「これは演劇のお約束ですよ」的な解説を入れたりだとか、ブレヒト幕に歌詞を映し出したりだとか、そういった「野暮だなああ」と思えてしまう演出が気になったのと、最後の展開はいくら芝居とはいえリアリティに欠ける、という(いやそんなこと言ったら機動隊の時点でリアリティは欠けてるわけだけども)ところとか、気になったこともそれなりにあるのだが、観劇後の最初の感想はポジティブなものだったので、あまりそれらをつらつら言うのもそれこそ野暮なのでやめておきます(いやもう充分言ってないか)。

劇中でかつての同志である教頭役の大高さんに、中村雅俊さんが「今の貴方の人生のテーマはなんなのだ」と詰め寄るシーンがある。現実を生きる人と、「何かのために」戦うことに自分を見出していた時代のままの主人公のギャップが浮き彫りになって印象的なシーンだったのだが、そこで大高さんがちょっと私でも記憶にないような入り方で泣いてしまっていたのにとても驚いた。シーンの途中で、突然ぼろぼろと落涙されて、涙を流すことぐらいじゃべつに驚きもしないけれども、最後ちょっと台詞が言えなくなってしまったほどだったのだ。

初舞台という片瀬奈々さん始め若手の皆さんもなかなかにうまくはまっていて良かった。個人的には加藤鷹を呼ぼうと孤軍奮闘する3年生の役をやった子が際だって見えた。アンケートにも書いてきましたよん。