本好きさんに50冊の質問・Q6〜Q10

  • Q06.映像化して欲しい(あるいはされた)、おもしろかった本を2冊教えてください。

ホーンブロワーシリーズ」。映像化、されているんです。というか、それがきっかけで読みましたのでね、ホーンブロワーヨアン・グリフィズ最高。だがしかし!私は声を大にして言いたい!頼むから「パナマ三部作」を映像化してくれええええ!と。燃えて萌えて燃え尽きること間違いないと思うんですけどコレ。なんでみんな手を出さないんすか?

冷戦交換ゲーム (Hayakawa pocket mystery books (1044))

冷戦交換ゲーム (Hayakawa pocket mystery books (1044))

五百万ドルの迷宮 (ミステリアス・プレス文庫)

五百万ドルの迷宮 (ミステリアス・プレス文庫)

「パディロ&マコークル」シリーズもしくは「ウー&デュラント」シリーズ。人に教えてもらった本、と迷ったんですが、しかも1冊じゃないうえに同じ作者だからってシリーズ名2つも出しているんですがいやほんとこれに食いつかないとか信じられない。こんな、こんな、こんなかっこいい小説をこのままにしておいていいんですか!?っていうかなんで映像化って喚いているかというと絶版になって手に入らない本があるからじゃ!そしてパディロ&マコークルに至っては未訳の本があるからじゃ!映像化したらもれなく商魂逞しい大人どもがこれでもか!と関連作品を売りに出すに違いないからじゃ!それを俺はマスター&コマンダーで学んだからじゃ!というわけなので遠慮はいらぬからバシバシ映画化権取得するように。そして映像化の暁にはアザガイは癖のある男前じゃないと許さない。

  • Q07.読んで泣いてしまった本を2冊教えてください。

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

泣けます!なんて宣伝文句で泣かしにかかるあざとさには辟易しますし、昨今のはい難病!はい余命わずか!はい努力!はい根性!どっすか泣けますか泣けますでしょ泣ける材料のみで作っております!的な風潮にもうんざりする。するけど、それでも、この本は泣ける。それはこの村山聖というひとりの天才棋士が、みっともないまでに己の欲望と戦い続け、勝つこと、強くなることに固執し、盤面をのたうち回るように将棋というものと向かい続けているからです。そしてその人生を、この作者がぎりぎりまで抑えた筆致で書き綴っているからです。読んでない人は読めと言いたい。同じ作者による「将棋の子」も超弩級なので、そちらも是非。

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

ある意味、アイデア一発の本とも言えるのかもしれない。でもこの胸の苦しさはなんなんだろうか。チャーリーの言葉に感じる痛みはなんなんだろうか。「ひとにわらわせておけばともだちをつくるのわかんたんです」とチャーリーは言った。もうずいぶん昔に読んだ本だが、いまだにこのフレーズを思い返すと、胸が詰まる。

  • Q08.人から教えてもらって読んだ、おもしろかった本を2冊教えてください。

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

人から教えてもらって、というか親なんですけど、しかも教えてもらったっていうか「その本面白いよ」的なアレなんですけど、でも自分じゃ絶対買わなかったろうなと思うので。世界のオザワ、なんて称号を知る前に子供の頃これを読んで、バーンスタインとかカラヤンとかの名前になんの感慨も抱いていなかったあの頃。つまりは、そういった音楽的知識なんてなくても、ひとりの青年の己が才能を恃みに異国の地で挑戦を続けていく、その姿が掛け値なしに読ませる本だってことです。

不連続殺人事件 (角川文庫)

不連続殺人事件 (角川文庫)

大学時代の先輩で、なんというかちょっと無頼気取りな、坂口安吾に心酔しているひとから勧めてもらいました。このおもしろさを何にたとえたらよいものか、ともかく、プロットや謎解きの鮮やかさもさりながら、ひとつひとつの文章のリズム、その美しさまで堪能できる推理小説はそうそうないんじゃないだろうかと思う。謎解きを知った今でも、そこにいたる部分を何度でも読み返したくなる本です。

Q09.おもしろかった外国の作品を2冊教えてください。

時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)

時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)

この本を読んでいた時、ああ、自分はいま最高に面白い本を読んでいる、最高に幸せだ、と思うほどにはまりました。読み終わりたくない!ずっとずっと読んでいたい!そんな風にも思いました。自分の「好き」の要素がぐぐぐっと凝縮し尽くされている本だといってもいいです。特に芝居好き、シェイクスピア好きのかたには是非読んで欲しい。演劇史に残る希代の悪役の、もうひとつの顔が見えてくるかもしれません。

シービスケット―あるアメリカ競走馬の伝説 (ヴィレッジブックス)

シービスケット―あるアメリカ競走馬の伝説 (ヴィレッジブックス)

ノンフィクション。ダメな男たちとダメな馬が、全米を巻き込む奇跡を起こす物語。オススメなのはこのライターの筆の鮮やかさで、ノンフィクションでありながら熱くなりすぎず冷め過ぎもせず、絶妙な距離感でこの興奮の物語を描いているところ。押しつけがましさがみじんもないその節度ある書きぶりに感服です。彼らの結末をかたる余韻も素晴らしい。

  • Q10.おもしろかった長い本を2冊教えてください。

完訳 三国志〈1〉 (岩波文庫)

完訳 三国志〈1〉 (岩波文庫)

吉川英治三国志ではなく、羅貫中三国志演義を元にした「完訳・三国志」。岩波書店から出ていました。私が中学生のころ、全8巻からなるこの完訳本の刊行が始まって、その第1巻を買ってもらったのだけど、とても高い本だったので(なにせ函入り)、月に1冊、父の給料日にならないと買ってもらえなかった。あっという間に読み切ってしまったあと、次の巻を買ってもらえるまでの1ヶ月をどれだけ待ち遠しく感じたか!あんなに何かを心待ちにしながら過ごした7ヶ月というのも人生でもうないかもしれない。この完訳本には葛飾載斗の版画絵が挿絵になっていて、時折見開きページでどかんと表れるそのかっこよさにも惚れ込んでおりました。

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

これは1冊の分量という意味で「長い」。長いといえば絡新婦の理のほうが長いんだけど、私は京極堂シリーズの中でこの「鉄鼠」がいちばん好きなので。新書の分厚さもすごいけど、文庫版とかもう、弁当箱だよね。