八月納涼大歌舞伎第三部

  • お国と五平

これ、たしか勘三郎さんの襲名の時にも観たんですよ。そのときも友之丞は三津五郎さんだった!この友之丞の役を積極的にやってみたいと思い、また絶妙なさじ加減で成立させる三津五郎さんという方はなんというか、一筋縄ではいかないお方ですなあ。
基本的な感想は前回と変わらないんですけど、ひたすらにわがまま、勝手、意気地無し、まったくいいとこなしの友之丞が、「その忠義は、傍目で見るほどにつらいものではないということだ」と切り返したりするあたりがこの脚本の面白いところかなあと思います。

今回は五平が勘太郎くんで、お国の扇雀さんは変わらず。しかし、橋之助さんと扇雀さんだと、あの足袋のシーン*1ですでに「この二人、絶対デキてる」感がぷんぷんしていたもんですが、勘太郎くんの五平、爽やか忠義者すぎて不義の匂いがしねえったら(笑)

追い詰められながらも蛇のようなしつこさで切り返しまくる、三津五郎さんの存在感が天晴れでした。

ぜひともこれは歌舞伎座で、一度は拝見したい!と思っていた芝居。ギリギリ間に合ってよかった!!
怪談ものの筋書きとしては王道というか、悪事に手を染めたもののそこからどうにもうまく転がらねえ悪人人生と、それに取り憑く怨霊、という感じで、四谷怪談のように「怖がらせよう」という趣向がこらしているわけでもなく、やはりこの芝居の眼目は重信、正助、三次の早替わりにあるのかなあと。

まあこれでもか!これでもか!というぐらい、次から次へと早替わり場面がやってきて、客もそれを期待していて、そしてその注目のなかで期待に応えてみせるという。プロの仕事を見た!という感じです。勘三郎さんはもとより、裏方の苦労はハンパねえこってしょう、これは。個人的には田島橋での正助と三次の早替え、あれには思わずすげえ、と声に出てしまった。

本水を使用した大詰めの立ち回りも最後までまったく飽きさせず、あの滝の中で見得をきる三次の姿には血が沸きますね。なんでしょうか、DNA?

今回は最後に勘三郎さんがこの有名な演目の創始者に扮し、歌舞伎座恒例となった八月歌舞伎としての〆の挨拶を。でも、新しい歌舞伎座が生まれても、納涼は是非とも続けていって頂きたいですよね。

*1:「靴擦れができちゃった、いたぁ〜い」「どれどれコレは大変だ、でももう大丈夫だよ♪」という、いやらしいことをなにもしていないだけにいっそうえろいシーン