「白昼夢」

  • シアタードラマシティ 17列33番
  • 作・演出 赤堀雅秋

赤堀雅秋さん新作。赤堀さんの作品、苦手な時とぜんぜんいける!時と差が激しいので、ついつい開幕して評判を見てから自分が見るかどうか検討する癖がついてるんですけど、今回は評判というよりも1時間35分で書ききりました、ってとこに「その意気や、よし!」とチケット購入。少ない人数で見せる、濃縮90分の芝居。大好物なやつじゃないですか。

引きこもりの弟、その弟と一緒に暮らす父、離れて暮らす兄。「引きこもりを社会とつなぐ」団体の男と女。その春夏秋冬。

引きこもりとその家を訪れる男女、という構図はどうしても岩井秀人さんの名作「ヒッキー・カンクーントルネード」(または「ヒッキー・ソトニデテミターノ」)を思い出してしまうけれど、そこは赤堀さんなので、もっとドロッとしたいやな手触りも確実に感じさせる作り。登場人物全員にある種のいやらしさ、よわさがあって、う、いやだ、と思わせる場面もあるんだけど(薫の「生理?」ってとことか。あれほんとキツい)、それでも今回はそれだけじゃない視線も感じたな。引きこもりの息子と父親、途中交わされる会話から実在の事件を想起させる部分もあるんだけど、あの父親が言う「ただ生きてたっていいじゃないか」って台詞は、泥濘の中でひときわ美しく感じられた台詞だった。

そういえば松尾スズキさんの「命、ギガ長ス」の台詞でもあったな。「ただ、いたずらに、長らえるだけでもいいので」。

いやしかし三宅さんのうまさに感じ入ったな。淡々として見えるけど、あの咄嗟の激情が唐突でなく、しかもさらに唸るのがそのあとの芝居の立て方ね!弟の首をマフラーで締めて、そのあと過剰にサイコパスなふうになったり、過剰に悲嘆にくれたりみたいなふうに流れそうなもんなのに、ごめんちょっと手が滑ってコップ割っちゃった、みたいなあの含羞さえ漂わせる事後感。最後のさー!父親に話しかけるあのセリフもさー!エモさにひっぱられない、こちらがその「優勝インタビュー」のなかにサブテキストを見つけていける余白を十分に残す芝居。いやー舌を巻きますわ。風間杜夫さんも、ここにきて全然枯れない芝居の濃厚さをこの面々相手にぐいぐいぶつけてきててマジで演劇モンスターだよ…と思いました。