「カモン カモン」


マイク・ミルズ監督、ホアキン・フェニックス主演。またモノクロ!「ベルファスト」の感想でも書いたけどモノクロに苦手意識があるんです私!でも予告編がむちゃくちゃ魅力的だったのでこれは見たいなと思い足を運んできました。

ラジオ局に勤めるジャーナリストのジョニーは子どもたちに対して今の自分や両親のこと、自分の、世界の将来について集中的にインタビューする企画を手掛けている。母の命日にふと思い立って妹のヴィヴに電話をすると、彼女の夫がトラブルを抱えており、一人息子のジェシーを預かってもらえないかと打診される。

しみじみと良い映画だったし、何が一番印象に残ったかって「人との距離感」ということについてすごく丁寧に丁寧に描写されていたところなんですよね。ジョニーとヴィヴは晩年の母の介護を巡って確執があったことが描写されていて、かつそれ以外にも兄妹の距離を遠ざける要因があったこともわかるんですが、でもなんつーか…血のつながりがあるからってそこを言い訳にするんじゃなく、一歩一歩確かめてお互いの今の距離を測ろうとする。あの最後のね、電話のところ、リアルだったし、胸に深く残るものがありました。

ジョニーとジェニーの関係性もまさにそうで、面倒見る側と見られる側、大人と子供、のステレオタイプな距離感に落とし込まず、探り探りお互いがお互いの距離をはかるようなエピソードを丁寧に積み上げていたなあと思います。ジョニーが教本のとおりにジェニーに謝罪するところ、素晴らしかったですよね。あそこでジェニーが「ぼくもおとうさんみたいになるのかな?」って自分の生存の不安みたいなものをこぼすのも、ここでようやく信頼関係が構築されたんだなという感じがしてとてもよかった。

眠る前のリラックス(足を休めて、手を休めて…っていうアレ)、すごくよさそうだった。ああいう睡眠導入音声あってもいいとおもうぐらい。

何を隠そう、私は「手紙」というアイテムのもつ一種独特の切なさが大の好物なんですけど、本作では文字ではなく「音」がその役割を果たすの、うまい~~と思ったし、こういうのに弱いんやおれは~~ともなった。ジョニーがきみはこの日々のことをおぼえていられなくなるだろう、でも僕は忘れない、というとこもむちゃくちゃぐっときまくった。

差し挟まれる子どもたちへのインタビューのリアリティも相俟って、どこかドキュメンタリのような手触りのする映画だったなと思います。ホアキン・フェニックスはこういう役の方が個人的にはツボ。良き映画でした!