「無駄な抵抗」

世田谷パブリックシアター×前川知大さんのプロデュース公演。イキウメのメンバーが主軸にいるのでなんかイキウメ新作と思いがちだけど世田パブ主催公演でしたそうでした。

ギリシャ悲劇だよ、オイディプスだよという反応は小耳にはさんでいて、実際見てなるほど確かにオイディプス!となると同時に、「無駄な抵抗」というタイトルのうまさに膝を打ちました。オイディプスの物語はご存知の通り、預言を受けた者がその預言から逃れようとするが、それこそが預言の成就に近づくことに他ならない…という、運命に対して「無駄な抵抗」を示す人間を描いたとも言えるわけですが、今作もそうした「運命」「予言」というキーワードはありつつも、最終的に「無駄な抵抗」は「無駄な抵抗」ではない、という筋道を示して終わるところが個人的にはむっちゃ刺さりました。

駅前広場によくある円形劇場ふうの舞台美術も印象的。あの駅に電車が止まらなくなる、というモチーフはなんだろう、世界からの追放を現しているのかなあ。桜と芽衣をとりまく人間たちが、あの駅前広場の舞台にいるときだけ役として生き、それぞれのやりとりが地続きになっていないのもギリシャ悲劇をなぞるからこそのアプローチという感じでしたね。

芽衣が桜から告げられた「人を殺す」という予言によって、芽衣は縛られた人生を余儀なくされるわけだけども、それは「人を殺さない」という、予言の成就への「無駄な抵抗」に過ぎなかったはずだった。しかしその無駄な抵抗があったからこそ、彼女を「正しいオイディプス」に、正しく父を罰するオイディプスにすることができたのだ。

いつものイキウメと違い抽象度の高い舞台ではありつつも、今回は作品とわたしのウマが合ったようで、ぐっと集中して観られた感がありました。キャストもみな、すばらしい!イキウメンズはもちろん、客演陣もみなよかったです。満足!