「ジャズ大名」

  • 高槻城公演芸術文化劇場南館トリシマホール 1階10列7番
  • 原作 筒井康隆 上演台本 福原充則・山西竜矢 演出 福原充則

KAAT神奈川芸術劇場のプロデュース公演で、近畿圏は兵庫とできたばかりの高槻の新ホール、高槻城公演芸術文化劇場にきてくれました。せっかくなら新しいホールで見たいよね~!ってことで、高槻まで足を運んできましたよっと。阪急の高槻市駅からのアクセスもよくて、ロビーもそれなりの広さがあり、座席もけっこう見やすい構造で好印象でした。KAATのプロデュース公演ってKAAT限りの上演のこともおおいので、新劇場とどんどんリンクしていってくれると関西住みとしてはありがたい。

原作である筒井康隆の小説は未読。江戸末期に日本に遭難してきた3人の黒人青年。彼らを保護(という名の監禁)を命じられた荻野山中藩の藩主は、彼らが日ごとでるリズムと音に次第に夢中になり、ひとり、またひとりと彼らの奏でるジャズの音色に魅了されていく…という筋書き。

これが舞台化作品として成功したといえるには、なにより終盤の大ジャズセッションにむけて、いかに疾走と熱狂を描けるか、というところにかかっている気がするんだけど、筒井康隆作品ならではの、加速度的に物語が転がっていくさまは実によく表現されていて、舞台を見ているのに小説を読んでいるような気持を瞬間味わわせてもらったのがすごい。熱狂という点からいくと、観客を巻き込むような仕組みがもう一つ二つあったらマジで芝居中でも客席総立ちになったんじゃないかって気がするし、その方がラストとの落差も効いてくるのでは。

中盤、黒人青年らが自分たちの過去を語る場面で、そのときどきで出会った人、別れた人、つらい境遇、それらを同じ旋律を用いつつアレンジを変えて演奏し、歴史が、境遇が音楽に何を与えてきたのかというのを描き出すところはこの作品の白眉といってよく、演劇ならではの醍醐味がつまった名シーンだなと思いました。

大鶴佐助さん、このところいろんなポジションで拝見するけれど、なにをやらせてもしっかり自分の印象を残すのさすが。うまいよな~。千葉雄大さんの藩主のキュートさ、それを支える藤井隆さんの家老とのコンビも実によく、座組全体のキュートな持ち味が存分に発揮されていた印象があります。セットも良かったな~福原さんて高さのあるセットを活かすのがすごくうまい印象ある。最後はまさに疾走、駆け抜けて一気呵成に盛り上げてスパッと幕切れになるのもとてもよかった。楽しい観劇でした!