「PAPER RUNNER」 小林賢太郎プロデュース

舞台はあるマンガ雑誌の編集部。そこで働く超個性的な編集部の面々に、岡山から原稿を持込に来たオマタはとまどうばかり。ところが、大先生の逃亡により紙面に12ページの穴が開くことになってしまった!なんだか不思議な編集長に、自由人ウズマキ、セオリー大好きシグマや見せかけ肉体派アラシヤマたちは、この苦難を乗り越えることが出来るのか!?
舞台上の時間経過を実際の舞台に置かれた時計と一致させた一幕もの。編集部という裏方的職業を舞台にしているということもあってか、なんだか三谷さんがこのシュチュエーションで描いてもおかしくないなあと思ったり。いやもちろん、似てるようで似てないと思うんだけど、この二人の作風は。

小林さんはコントでも「イイ話」風味なものが必ずひとつはあって、でなぜか芝居になるとこのイイ話風味なところがかなり前面に出てきてる気がする。もうちょっと毒ある話も見たいーと思いつつ、うーんでもなあ、本当にちゃんと笑わせてくれるからなあ。なんかそれだけで、まあいっか!と思えてしまうんだよなあ。ネタの繰り返しがちょっとシツコイとか、やっぱり演出的にベタな感じがするとかあるんだけど、あと各々のキャラが前回のsweet7と同じじゃん!とか。でもさりげなく張った伏線が最後にはきちんと全部拾われていくあたりのソツのなさはさすが小林さん!って感じだし、キャラクターが急速に笑い方向にゆがみを見せてきても「アリ」と思わせる世界観は小林さん独特のものだなあ、って思う。今回はご自身も漫画連載を持っていると言うこともあって、貸与権の問題とか(笑いにまぶしつつも)出してきていたのが興味深い。特に私は、編集長室岡さんがトマトくんにいう「良い読者と甘い読者は違う」「プロになった以上、そのアンケート用紙の向こう側に居る人を選ぶことは出来ない」「プロになるとは腹を括るということ」というまさに良いこと言った!!な台詞に首が取れるほど頷きまくりたいわけで、今回の芝居に大きくマルをつけてあげたいのも、そんな個人的な思い入れによるのかもしれないのですが。

もう一つぐりぐりの◎で推したいのはなんといっても今回片桐さんが格好良すぎたってことかなあ、と。いんやもう、マジ惚れます。あからさまジャック・スパロウパイレーツ・オブ・カリビアンを意識した格好で、でもって微妙に色々間違ってるんだけど、でも格好いい。絵馬を腰からぶら下げていても格好いい。ホームレスなんだけど格好いい。正義を愛する自由人、破天荒な天才型。キャーーーーッッ!!途中幾度か本気オチしそうになる瞬間があってやばかった。ふい〜。それにしてもコントを見ていたときから、ラーの二人で芝居がうまいのは片桐さんの方、と言い続けていた甲斐もあったというものよ、な出来でしたねえ(ちなみに小林さんがうまいのは演技じゃなくて形態模写だと思う)。久ヶ沢さんも前回に引き続きステキにおいしい。犬飼さんは途中何度か台詞が怪しかったのが残念〜。でも段ボールに頭ツッコミ攻撃は素晴らしかったですわ(笑)

1人編集部に残ったウズマキが夜景を見ながらいうセリフは、ああっ、そんな、イイ話テイスト過ぎることを・・・!と思いつつ、でも実はちょっと感動してしまったりしたのね、てへ。「おまえらみんな主人公に」よりその前の「働くねえ〜〜〜!」という言葉に込められた優しさにうっかりしてやられてしまったのでした。