「八月納涼歌舞伎第三部 法界坊」

  • 1階8列23番

3年前の扇町公園での「法界坊」も観ているのに、あの時はその後に観た「夏祭」に身も心もさらわれてしまったので実は印象に薄いのだよなあ。面白かった、楽しかったという記憶はあるのだけど、配役とかちょっと失念していたりして。双面でおさくをやっていたのが誰かどうしても思い出せず、パンフを引っぱり出して確認したら橋之助さんだった・・・!うわ、覚えてない自分がうらめすぃ。

歌舞伎座の舞台の上にもうひとつ別の客席が設えてあって、「中村座」の空気が歌舞伎座に、という感じ。その客席に人形とおぼしきお客さんがいるんだけど、劇中で突然動き出したりするサプライズも。

いやあそれにしても、笑った笑った。
要助とおくみを前に法界坊や勘十郎が鯉魚の一軸をすり替えたりするところはもうあまりにおかしくて涙が出ました。屋敷にあがる前の要助と野分姫、おくみのやりとりなんかも最高でしたね。福助さん、しれっとした顔してるからよけい面白いんだよなあ。

それに加えて今回、三囲土手の場の法界坊が異様に怖くて印象的だった。それまでけらけら笑っていたのに、権左衛門を殺すところや、おくみと野分姫を並べて縛り上げるところで、急に「法界坊」という怪物が怖くなったっつーか・・・。それははっきり扇町で観たときには感じなかった感覚でした。

勘三郎さんって、やっぱすげーなー、と見るたびに思ってる気がする。すごい磁力のある人だよね。どうしてもどうしても目がいってしまうんだよなあ。あれだけのことをしでかしているのに笑ってしまうのも、それが一気に怖くなるのも、この人の芸の幅なんですよね。

勘太郎くん、あの若さで勘十郎役を好演・・・つーか怪演。すごすぎです。私はどんな舞台でも「きちんと笑わせてくれる」人を尊敬しているので、勘太郎くんがここまで思い切りやってくれているのが嬉しかったです。それにしても、お父さんとやっぱ似てるよねーー!
大喜利「双面水照月」でのおさくもきりきりと格好良く、達者だなあって感心してしまいました。

千秋楽ということで、大喜利のあとカーテンコール、そこで舞台上の客席で人形に扮していたひとがタイツをかぶったまま舞台へ降りてくると・・・これが実は芝のぶちゃんや弥十郎さん!更には串田さんも!法界坊人形の宙吊りもあって本当にお祭り雰囲気。楽しかったです。