どこまでも舞い上がれ


エレファントカシマシ、桜の花舞い上がる武道館。
行ってきました。
エレカシにとっての聖地といえばやはり一も二もなく日比谷野音、ということになるだろうと思うのだけど、しかし今回の武道館は8年ぶり、上り調子のバンドが到達しました武道館に!というのとは全く違う、まさに彼らは「返り咲いた」のだった。その重みは、RO69のブログでの昨日から今日にかけてのフィーバーっぷりでも伺える。スピッツの初アリーナ!のときもフィバってたよな、ここ。

しかし、西スタンド1階最前列という、非常に恵まれた場所で見させて頂いたのだが、ほんとうにただただ、凄いライブでした。それしか言えない。集中力を使いすぎて帰り際もうへろっへろになった。幸福な疲れというレベルじゃないほどに精神力を使い切った。そしてもちろん、その何百倍もの精神力で、宮本浩次エレファントカシマシはあの武道館のステージに立っていたわけだ。

いつも無音の中登場するエレカシにしては珍しくSEとともにメンバーがステージに立って、そして1曲目が「新しい季節へキミと」。始まった瞬間にストリングスの楽団が現れて歓声が起こる。その楽団の音を引っ張る宮本の声のすばらしさ。

なんなんでしょうね、あの宮本の声は。人間の、どこを、どんな風にしたらあんな声が出るんでしょうか。声だけじゃない、あの驚異の喉。信じられない。

今はここが真ん中さ!のときのハンドマイクで左右のスタンド近くまできて、そのときに真っ正面で指さしをいただいて腰が砕けそうになったとか、デーデでトミがもうたたき出してるのになかなか始めなかったりとか、あと大大大好きな未来の生命体をやってくれたりとか、このところピアノアレンジでの演奏が続いていた「風に吹かれて」が原曲バージョンで震えがきたとか、
さらば青春、甘き絶望が聴けたりとか。
左右にモニターがあって、でも基本的にステージのほうに集中していたんだけど、さらば青春のときにふっとモニターを見たら、そのときの宮本が本当に、世界一かっこよくて、ああなんだこのかっこよさは、この人は誰だ、人間なのかって思うほどかっこよくて、そしてそのあとも何度かモニターに目をやったんだけど、見るたびに宮本は世界一かっこよかった。そう乱暴に言い切ってしまいたくなるかっこよさだった。

個人的に、今回の武道館で圧倒的だったのはこのあと、ストリングスをもう一度呼び入れてからのリッスントゥザミュージック、昔の侍、シャララ、珍奇男の流れだった。特に圧巻だったのはシャララ。チェロとバイオリンの二人と共演した(女人禁制とも言われたエレカシのステージに・・・と言って紹介したのだが、二度紹介して二度ともチェロの方の名前を忘れる天然男宮本)リッスンのアウトロも凄まじかったのだが、シャララは本当に息をするのも忘れるぐらいの集中力で見入ってしまった。基本的に、宮本はいつもそのときの自分の感覚でアウトロの長さを決めたり、リズムの早さを決めたりするので、キーボードの蔦谷さんだけとかならともかく、総勢14名ものストリングスと共演ということになるとその宮本の感覚のままに、なんていう技はできないわけだけど、でもあのこれでもか!と展開しまくる曲を完全に息を揃えて、だけれども決して予定調和ではなく見事なグルーヴを生み出していた。シャララが終わった瞬間の、解き放たれたような観客の歓声。鳥肌が立った。

そのあと、新しいアルバムからの曲を立て続けにやったのだけど、ハナウタの曲紹介をしたときにこの日いちばん、とも思える大きな歓声が沸き上がって、20年以上シーンで戦ってきて、もう一度武道館に返り咲いて、そして一番新しい歌をみんなが一番歓迎してくれるってすげーよな、すげーことだよなとしみじみしてしまった。今CMでも流れているけれど、宮本のうつくしい声とメロディが堪能できるうつくしい歌で、実際に聴いてみたらやっぱりその何倍もうつしくて、なんだかもう、泣けてきて参った。

桜の花舞い上がる道を、で本編ラストになるのかなと思いきや、ストリングスの楽団を見送って「まだもうちょっとやってもいいか!」と叫ぶ宮本。すげい、あんたすごすぎるよ。続くFLYERのイントロ、多分だけど宮本が思ったよりもトミの入りが一瞬早かったのだと思う。すごい勢いで宮本が振り返って、うわっ、止めるか、と思ったけどトミの方に近寄っていっただけで、音は止めなかった。そのFLYERの最初の第1声のすさまじさたるや。そしてトミのフィルのど迫力たるや。石くんのヘドバンはなんかもう、すごすぎて別の生物だし。FLYERやってるときの4人はほんと「バンドだーー!!」って感じがしてすごく好きだ。

アンコールの2曲目が「風」で、本当に会場中が聴き入ってたんだけど、この日は観客もすごく集中してたなあと思う。「風に吹かれて」のときに、曲の最後で一瞬拍手が起こったんだけど、宮本がそのあとほとんどオフマイク、みたいな感じでスキャットを続けていたってのがあって、みんな最後の一音が終わるまでしっかり聴かねば!という気合いもあったのかなあ。続く流れ星のやうな人生のとき、もう宮本は足下もふらふらで、そのまま脱水症状で倒れるんじゃないかってほどだったのだけど、でも最後の最後まで、ファイティングマンまであの声と喉は響き続けていて、なんかもう、何も言えないわ。

去年渋公でのライブの時に、自分の目の前に、これほどまでに全身で何かを伝えようとしてくれているひとがいることにただただ感動するし、この想いには誠実に応えなければならないと思うって自分の日記でも書いたのだけど、同じことをこの武道館でも思いました。あんなにもすべてをさらけ出してくれる人って他にいない。宮本も、エレカシのメンバーも決して器用なひとたちではないけど、だからこそあの必死さには素直に胸を打たれる。

とにかく素晴らしいライブだった。この場に立ち会えたことを幸福と思う。入っていた撮影機材のハンパなさからいって、この公演はおそらく中継、DVD化が待ってるのではないかと思いますが、これが形として残るのなら本当に嬉しい。そしてその残る形とはべつに、いつまでも自分の脳内に焼き付けていたいと思うステージでした。

SETLIST
1 新しい季節へキミと
2 この世は最高!
3 今はここが真ん中さ!
4 デーデ
5 未来の生命体
6 風に吹かれて
7 さらば青春
8 甘き絶望
9 悲しみの果て
10 男は行く
11 リッスントゥザミュージック
12 昔の侍
13 シャララ
14 珍奇男
15 It's my life
16 ハナウタ〜遠い昔からの物語〜
17 to you
18 絆
19 笑顔の未来へ
20 桜の花、舞い上がる道を
21 FLYER
22 俺たちの明日
〜EN
23 今宵の月のように
24 風
25 流れ星のやうな人生
26 ファイティングマン