「うるう」K.K.P.

「大人のための児童文学」というキャッチコピーのとおり、ある種寓話的な物語でした。それで観ながらなにを思い出したかというとあれだ、NHK教育でやってる「おはなしのくに」。

KKPでキャストは小林さんだけなので、これは言ってみれば(チェロの伴奏はいても)ひとり芝居という形態になるんだと思うんですが、もともと小林さんの芝居は演技というよりも物凄く達者な形態模写、というのに近いと私は思っていて、それで物凄く形態模写が達者な人がひとり芝居をやると「おはなしのくに」になるんだなあ、という。そういう、どこか絵本をめくるような世界を小林さんが狙っていたのだとしたら、それは見事に成功していたと思います。

逆に言うとひとり芝居としては食い足りないところがあるというか。ひとりしかいないので、当然自分の芝居で物語の頂点を作らないといけないわけですが、小林さんの芝居はそういった「憑依」的なものと実はすごく遠いところにあるんだなあと。だからそのズレを、今までは片桐さんなり久ヶ沢さんなりというひとが対象化することで成立してた部分もあるんですよね。

セットの効果的な使い方、小道具使いのうまさ、映像センスなどはいつ見てもゆるぎないなあと思います。欲を言えば台詞の説明過多な部分をもっとそぎ落としてくれるとより好みだなあ、と思ったりも。というか、小林さんはコントではその最小限の説明で最大限の効果、というのをいとも容易くやっているのに、なぜ「芝居」になったとたんああも親切になるのだろうかという(笑)

宣伝美術でもそのスタイルなのですけど、小林さんが銀髪になっていらっしゃるので、なんだこの少女漫画から抜け出してきた人は、とそのビジュアルににまにましました、ええ。カーテンコールで「ああ…いまだめだ何も考えられない、今日とてもよかったです」と仰ったときの笑顔もとてもよかったです。