「ジャージー・ボーイズ」


60年代に活躍したバンド「フォー・シーズンズ」を題材にしたブロードウェイミュージカルの映画化。監督はクリント・イーストウッド

いやー、とてもよかったです!ミュージカルの映画化だけど、まんまミュージカルというわけではなく、しかし全編にわたってちゃんと舞台の匂いが残っていたように感じられました。エンドロールをあれでみせてくれるのは観客へのおみやげ以外のなにものでもない!すばらしいですね。

こういうの、よくない癖だよなーと自分でも笑っちゃうのだけど、時代背景も彼らを取り巻く環境も音楽のスタイルも、ありとあらゆるものが違っても、「ひとつの幸せな時代を体験したバンドが崩壊する」という物語には自分のトラウマを発動させてしまう何かがありました(自分でもどうかと思うほどしつこくてイヤになりますね)。そして実際多かれ少なかれ、現実にはこうやっていろんなものが終わっていくんだろうな…と思わされる数々の描写の積み重ねにもうなりました。マッシがタオルのことで爆発するとことかさー、厖大な借金(とマフィア)を前にしているというシリアス極まりないシーンでする話なのかと多分誰もが思うところなのに、受け流してきたマッシがとうとう受け流しきれなくなったその心情がすごくよくわかるんですよね…。

しかしそういった、集団としての終わり、バンドというものの刹那の輝きとだからこその切なさややりきれなさ、そして生きていくうえで誰もがぶつかる悲しみと困難を、けっしてくどくならずに描いているからこそ、彼らが「音楽」に出会い、「音楽」にまた救われるシーンが胸に深く刻まれるんですよね。

レコーディングルームで、どうにかしてこの曲をレコードして出させてくれ、落ち込んでいる友人を励ましたい、と語っているうしろで、あのリズムが低く聞こえてくる。観客はもうもちろんみんなわかっている、「その曲」がこの先何十年も生き続け、歌われ続け、世界中で数多のアーティストにカバーされるポップミュージックのマスターピースになることを。あの曲を聴いているときの高揚感は、ちょっと筆舌に尽くしがたい。

ブロードウェイのオリジナルキャストで映画を撮るというのもすごいよなー。しかし、楽曲、歌がやはりこの物語の主役でもあるからこそのキャスティングなのでしょう。堪能しました。