「バーナデット ママは行方不明」


ツイッターでぽろっと予告編のツイートが流れてきてあら!リチャード・リンクレイター監督じゃん!と思っていそいそ見に行きました。これ北米公開2019年だったんスね。主演は麗しのケイト・ブランシェットさま。

予告編の印象からすると、平凡な主婦が自分を取り巻く日常と「埋没していく感覚」から脱出をはかり、その先がなんと南極だった…みたいな展開を想像していたんですが、ちょっと違いましたね。何が違ったかって、バーナデットが圧倒的に「持てる者」だったこと。新進気鋭の建築家として名を轟かせ、経済的に自立した理解ある伴侶を得て、一人娘との関係は良好。もちろん、だからその人が満たされた生活を送っているかというとそうとは限らず、本作もまさにバーナデットが何を求め何に怯えているか、が紐解かれていくわけですが、しかしある側面では彼女は実に「恵まれた」生活をしているように見える。そういう点でちょっと私が斜に構えて見てしまったところはあった気がするな。

他者とうまく付き合えず、「ママ友」たちとの間に軋轢しかないバーナデットと対立するのがクリステン・ウィグ演じる隣人オードリーなわけですが、このふたりの丁々発止のやり合いはマジで今作の見どころのひとつでしたね。うまいのは、オードリーを完全に「いやなやつ」に落とし込むことなく、いやバーナデットもちょっとあかんよ、と観客に思わせつつ、あの連帯にもっとくるところ。別に無二の親友になったわけじゃないけど、相手が真に窮地に立っている時には差し伸べる手があるっていうあの関係、めちゃくちゃよかった。

再三の流産を経てさずかった娘ビーとふたり車の中でシンディ・ローパーのTime After Timeを熱唱し、思わずバーナデットが感極まるところ、よかった。寄宿舎つきの学校に進学しようとしている娘との時間、これが「二度と戻らない美しい日々」であることをバーナデットはわかってるんだよなあ。またビーがむちゃくちゃいい子なんだよなあ!

最終的にはバーナデットはまた自分で輝きだす方法を見つけるわけなんだけど、その舞台が南極というのがまた魅力的だった。あの氷の世界を実に静謐に美しく撮ってるよねー。最後に流れる実際のハリー研究基地のユニークさ、すごく印象に残りました。バーナデットじゃないけど、思わず住んでみたくなる!