「その鉄塔に男たちはいるという」  MONO

タイトルが格好良くて、チラシが格好良くて、最近よく名前を聞く土田英生さんの劇団で、・・・というわけで行ってきました。MONO初見。

戦場の慰問でショウをするためにやってきた男5人の「コミックメン」というグループ。だが、戦争のためのショウに嫌気のさした4人は座長を置いて逃走する。駐屯地からあまり遠くない鉄塔の下で、1週間後に終わる筈の戦争が終わるまで、4人は隠れていることにした。ところが、居場所がばれていないと思っていたのは4人だけ。駐屯地の連中は4人がその鉄塔に居るらしいことを知っている。なぜなら戦場から逃げてきた兵士がその鉄塔へやってきたからだ。彼は言う。「探していたんです。仲間に入れて下さい。」と。

狭い舞台の中で男5人が繰り広げる会話劇。アクションなし。派手な演出なし。しかし、迫力は十分。畳みかけるような会話と、間、テンポ、見ていて飽きない。何気ないセリフの中にキャラクターをはっきり感じさせるのも見事。演じている役者さんも、みんな上手い!驚きでした。

4人が次第に分裂していく様とか、逆に一気にまとまる感じとか、城之内のキャラクターとか、ビミョーに「ウマヘタ」なコミックメンのオープニングの歌&振りとか、だんだん舞台のキャラクター達にものすごく愛着を覚えて来るんだけど、ところがこれがラストはけっこうブラックなんですよね〜。それまでものすごく喧嘩(しかもきっかけはくだらない)していても、どんなに罵倒していても人の情が感じられたのに、鉄塔の上から覗く戦場と兵士は、どんなに静かな言葉で描写されていても情が感じられなくてそれがものすごく「ヤな感じ」。最期ははっきりとは見せなかったけど・・・うーん土田さんうまいなぁと思ってしまうのだった。

笹倉を演じる水沼さんの、「俺たちはさ、そういうのから遠い存在でいたいじゃない。アリとキリギリスでさ、キリギリスがいけないのは助けを求めるからなんだよ。歌ってれば良かったんだよ。・・・銃声が聞こえてもさ、遠い存在でいようよ。」というセリフがすごくすごく好きでした。

初MONO。タイトルが本当に秀逸。土田さんはタイトル付けの名手ですね。この舞台本当に良かったなあ。確かOMSで賞貰ってたんじゃなかったかしらん。他のキャストでも、ちょっと見てみたい気もしますね。