「SLAPSTICKS」

ケラさんのサイレント映画への愛がふんだんに詰まった一本。一幕目はサイレント映画の説明も兼ねたセリフと、実際のフィルムの使用が多くてちょっとうざったい感じはあるものの、ケラさんの狙い通り二幕からは怒濤の展開で飽きさせず、なんとも切ないお芝居に仕上がっておりました。二幕でロスコー・アーバックルが「お客さんに笑ってもらえるなら死んだってかまわない」と言った後に映し出されるサイレント映画の決死のドタバタぶりは、ケラさんの笑いというものへの執着、それに命を懸けていた過去の映画人に対する愛情がひしひしと感じられて、笑いながらも泣けてきてしまったことです。

初めて拝見するオダギリジョー氏はさわやかな好青年ぶりがぴったりはまっていてよかった。オットコマエだし、弾けるところはきっちり弾けてくれるしで。古田さんのアーバックルは、あの肉襦袢はどうなの!と思わないでもないが(笑)やはり流石です。廣川さん、村岡さんのナイロンコンビが個人的にはすごく好印象。あ、もちろん峯村さんもですが。
山崎一さんと住田さんの「現在」コンビもなんとも味があって良かった。微妙に二人がナンセンスな世界を体現しているのが何とも(笑)

今だから言えるが、どこかの雑誌でのインタビューでオダギリ氏が、舞台に対して非常に斜に構えた態度だったんで「なんやコイツ」とかちょっと思ってたんですけど、舞台の上ではきっちりかっちり仕事をしてくれていてやるときゃやる人なんだなと感心したもんです。