「両国花錦闘士」

東京公演の感想を拝見するになかなか面白そうだぞ、作・演出が青木豪さんだしそんな変なことにはならなかろう、と思ってチケットを取りました。劇場も家から近いし!岡野玲子さんの原作は未読です。

力士だけどアンコ型相撲取りは「美しくない」と公言する昇龍と、典型的なアンコ型相撲取りである雪乃童のライバル関係を軸に、恋とか欲望とかも絡ませつつの角力道(ロード)が描かれるわけですが、いやーすがすがしかった。オープニングの主題歌やけにかっこいいな!?と思ってたらデーモン小暮さんご提供だった。そんでキャストが踊る踊る。もう、踊る踊るなんてもんじゃないくらい踊る。力士役は基本的に廻し一丁の姿で踊る。廻し風パンツではなくしっかり締め込んである廻しである。もう男の裸、ゲシュタルト崩壊

こうしてずーっと男のふんどし姿を見ていると、やっぱある程度肉付きが良い方が魅力的よね…と思うし、スレンダーな体形は逆に見ていてつらみがあるのが面白い。やっぱスーツも廻しも着こなすには胸板が必要なんだなとこの先役に立つかどうかわからない知見を得ました。

しっかり踊れるキャストを揃えていること、スタッフ陣に一流どころを揃えている(美術二村さん、照明原田保さん、振付は梅棒)こと、キャストにとにかく全力でこの舞台を高めていこうという気概があること、そういうものが板の上からオーラとなって立ちのぼってくるようでしたよ。

芝居の展開のなかで「あたしがあいつのこと好きなんて…!」要素は私の琴線にビタイチ触れないのでアレなんですが、昇龍が相撲というものに何を見ているか、がわかってくる2幕の展開はよかったし、なにより最後にセットの上に見事な土俵が現れ、昇龍の「夜も光るほどつややかになって、おまえらを眠れなくさせてやる」って台詞があまりにもよくて、グワーーっと最高潮に高まったところで幕、だったのがすごく気持ちよかったです。

主演の原嘉孝さん、よかった、よかったしなによりこの舞台の主演として本当に美しかった。うつくしい、ということ、うつくしさとは、という問いがこの作品の大きな背骨だから、それを体現する役として120%の仕事を果たしたと言えるんじゃないでしょうか。しんぺーさん伊達さん転球さんの小劇場チームがんばってた、がんばって踊ってた(笑)

相撲にまったく詳しくないけど、やっぱりどこか「ハレ」のものだと思うし、そういう意味では演劇との相性がいいんだろうなと思いました。この作品自体はいろいろと予期せぬ事態に見舞われて、加えてコロナの状況もあり客入りとしても厳しい状況になっているけれど、舞台の熱量は確かに届いたし、そういう意味では間違いなく「ハレ」の時間だった。カーテンコールのスタオベはそれらをまるっと讃える観客からのエールだったと思います。