「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」

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ダニエル・クレイグボンドフィナーレ。監督はキャリー・ジョージ・フクナガ。本来の公開日はいつだったか…確実に1年以上公開延期の憂き目にあいましたが、無事劇場公開となりました。途中何度かあわや配信行きか、という噂も出たけど、007製作陣は一貫して配信行きを蹴り続けたよね。日本では緊急事態宣言明けの金曜日かつファーストデー公開という、これ以上ないタイミング。

むちゃくちゃ長尺(163分)でしたが、意外と長く感じずに楽しめたのはよかった。ところどころオフビートなやりとりもあってそういう緩急にも助けられた感じはあります。

アバンタイトルでマドレーヌの子ども時代の出来事が描かれ(いやもう、アバン長ッ!と声が出そうになった)、前作スペクターからまるっと続いて、マドレーヌとボンドのハネムーンさながらな風景からスタート。しかしこれ言っちゃうと元も子もないけど、このふたりに正直そこまでのケミストリーをスペクターの頃から感じていなかったので、このテンションで160分だったら相当キツいな…!と思ったけど、早々に裏切るの裏切らないのの話になったので安堵しました。

ところどころ「おお~、今のはいい~~」と思う場面もあったけど、しかし最後のあのサフィンとの島でのやりとり(というか展開のすべて)が、美しい物語の弧を描いていないというか、物語の生理に則らず決まった行き先(まあつまり、ボンドの死)に向けてねじまげているように感じられ、ラスト30分ぐらいは相当「スン…」としちゃってたなと思います。5歳の子をさらって切り札にしようとしてるのに突然放り出すとかなぜ?だし、無理に土下座とかさせるなよお、だし、何より「島の施設全体の爆破」を「一刻の猶予もなく」成し遂げなきゃいけないってあたりのスリル部分の描き方が不十分すぎたと思う。

サフィンがスペクター一味を憎み、その復讐を成し遂げる…までは、そこにボンドが絡みつつもうまく転がっていたように思うのに、ボンドvsサフィンの動機のほうが薄まっちゃってるんですよね。突然「人間は自由なんて本当は求めてない」みたいな長広舌をサフィンがぶち上げだしたときに「ブルータスよお前もか」となってしまいました。頼む!普通に金のためとか言ってくれいっそのこと!

よかったのはパロマとのやりとり全部、フィリックスとの別れ、Qやマネーペニーやノーミとの会話、そういう部分はシリーズを重ねてきたからこその、何でもない会話でも味が沁みてる感があって好きでした。ともあれ、ダニエル・クレイグはおつかれさま!確実に新しいボンド像だったし、だからこそ生まれた傑作もあったし、ひと口に15年とはいっても、ひとつの役に捧げる時間としてははかりしれない長さがあったのではないかと思います。また過去作品でも見返そうかな!