「十二月大歌舞伎 第二部」

「爪王」。勘九郎さんの狐と七之助さんの鷹。このコンビでは3度目の上演になるんですかね。2010年に歌舞伎座で拝見したのは記憶にあるんだが検索したら2014年に南座でもかけてらっしゃいました。これ見てないな。なんで見てないんだろう。

さすがに13年前とは脂ののり方が違います!といわんばかりの、お二人とも貫禄のある、しかし身体のキレとしてはちゃんと鋭さが残っており、この演目、今見ないでいつ見るの!?というぐらい仕上がっております。勘九郎さんの狐は、ご本人得意分野というのもあり、初役の時から自家薬籠中の物という感じがありましたが、今回七之助さんの鷹が増して見事で舌を巻きました。狐との戦いを制したあと、高みに上り勝鬨を上げるかのようなあの神々しさ!尊さのあまり思わず拝むわ。

思えば歌舞伎って「獣化」してみせる演目がけっこうあるけど、爪王ってケモナー、トリスキーの皆様にはむちゃくちゃ刺さるやつじゃないかと思った。鷹匠と鷹の相思相愛ぶり、すごない?囲炉裏の端近にいる鷹に暖かい空気をおくってやるのとか芸が細かすぎなんよ。それで目を細める鷹の表情がマジ鷹に見えてくるので人間の表現ってすげえな…と改めて思いました。

今回なんと最前列ど真ん中で拝見したので、お二人の間合いの近さ速さ、表情の作り方まで至近距離で拝めていやー至福至福。

俵星玄蕃」。松緑さん主導で講談の「赤穂義士外伝」を歌舞伎化するシリーズ第2弾。今回は俵星玄蕃をクローズアップ。

槍の名手である俵星玄蕃は凄腕ながらも日々の生活に倦み、酒に溺れる毎日。そんな中、道場での弟子のひとりであった杉野十平次が郷に帰ることになったと言って挨拶に訪れる。実はこの十平次は蕎麦屋に身をやつした赤穂の浪人のひとりであったという筋書き。

まず、この師走十二月に忠臣蔵にまつわる演目がかかる、これだけでかなりポイント高い。時節を得るって大事なことなんだなあ。あの陣太鼓が聞こえてきたとき思わず胸高鳴ったもんね。

べらんめえののんだくれだが自分の腕への自信と武士たるものへの誇りだけは失わない玄蕃、松緑さんあまりにもニンすぎた。本当にはまり役。杉野十平次とのドラマはもっと盛り上げてくれてもいいのよ!と個人的には思いました。あのふたりマジでドラマしかないので(身分を隠しているもの、隠していることをうっすら察するものという関係性に加えて敵方に回るのかどうなのかというスリル)、なんなら一太刀交えてもろて…と自分の癖を押し付けそうになっちゃったよ!