「CVR〜チャリー・ビクター・ロミオ」 燐光群

  • 伊丹AIHALL A列16番
  • 演出 坂手洋二+ロバート・バーガー+パトリック・ダニエルズ+アービン・グレゴリー

CVRというのはコックピット・ボイス・レコーダーの略。この芝居は、実際に起こった6つの航空機事故で回収されたCVRのスクリプトから、その様子を役者たちが再現していくもので、オリジナルはアメリカで上演されたもの。取り上げられている航空機事故は以下の6つ。

1 アメリカン航空1572便/1985年11月12日
2 アメリカン・イーグル4184便/1994年10月31日
3 アエロペルー603便/1996年10月2日
4 アメリカ空軍ユークラ27便/1995年9月22日
5 日本航空123便/1985年8月12日
6 ユナイテッド航空232便/1989年7月19日

アメリカでのオリジナルメンバーと燐光群坂手洋二の共同演出で、昨年日本で初演されました。その好評を受けての再演です。

なんというか、感想が難しい。難しいという言葉でもちょっと違うような気がするが、とにかく、面白かった、すごかった以上のものを受け取ってしまったという感じか。これが実際に起こった現実の出来事であり、そこでたくさんの命が喪われたという事実の重さからはなかなか逃れられるものではないです。個人的に飛行機が身近なところにある職場でもあるので、余計に堪えた部分もあったかもしれませんが、それにしてもこれはやはり重い。

ですが、もちろん見るべきか見ざるべきかと聞かれたらそれは「見て欲しい」と答えるわけで、それほどのまでの重さを引き受けられる心の体力に自信がある人には絶対に必見の舞台だと思います(そうじゃない人は、引きずられて辛いかも)。確かに題材的にギリギリのものではありますが、しかし演劇のひとつの形として傑出したものだし、大音響とその音響に震える床、あの飛行機独特のゴオオという音を聞くうちに、観ているいうより乗っているという感じにすらなるその体験は貴重なものだと思います。私は見ながら思わず足を踏ん張ってしまうことが何度もありました。

日航123便の、御巣鷹山の事故があった日は今でも鮮明に覚えているし、離風霊船の「赤い鳥逃げた・・・」で描き出された悲痛さが忘れられない身としては、このCVRが聞いていてやはりもっとも辛かったです。その他では非常に印象に残ったのは3番目のアエロペルーの事故です。その事故原因の一種あっけなさとCVRでのパニックぶりの落差に何ともいえない気持ちになってしまいました。いずれの事故も、その墜落までの長い間、ギリギリの状況で戦い何とかしようと前を見続ける人間の姿が描かれていて、しかしその前に待っているのは悲劇なのだという事実が、やはりなんとも切なく想えてなりませんでした。